(add-hook 'hook-name 'hoge)
などで変数名がクオートのみのもの('hoge
)とシャープのついたもの(#'hoge
)を見かけますが、違いは何でしょうか。
またこれはEmacs Lisp特有でしょうか。
1 件の回答
まず、クオートは、(quote hoge)の略記、シャープクォートは、 (function hoge) の略記になります。
この、'hoge (quote hoge) と #'hoge (function hoge) の違いはEmacs 特有ではありません。
最初期のLISPである、LISP 1.5 から連綿と受け継がれているものです。
詳しく書くととても長くなるので、大きく2つに分けて、乱暴に箇条書きにしてしまうと、
Quote vs Function スコープ篇
- 初期のLISP (1959年)で関数を引数にした場合意図しない動作となることが指摘される
- LISP 1.5では、上記に対応するため、
function
とfunarg
を導入し、quote
と使い分けるが、本当に実現したかったものは、Schemeのようにレキシカルスコープを持つ方式だった - Common Lispや最近のEmacs 24ではレキシカルスコープが利用できるようになった
等々ですが、Common Lispと最近のEmacs Lispでは、quote
とfunction
は、レキシカルスコープで書かれた場合に違いがでてきます。
具体的には、
- クロージャーを作る(quoteだと作れない)
- ローカル関数等を作る
ですが、Emacs Lispにはローカル関数がありませんので、前者の違いのみだと思います。
Quote vs Function 束縛アクセスの戦略篇
なぜEmacs Lispでquote
やfunction
が殆ど同じような動作になってしまったかというと、Emacs Lispの先祖のMACLISPがクロージャーのようなものは重視せず、処理系の速度向上を図ったためです。
当時の実用的なプログラミングスタイルでは、クロージャーが多用されることは考えられておらず、そこをきちんと処理して遅くなるよりは、別の部分の速度や効率を向上させよう、という選択です。
MACLISPを先祖に持つCommon Lispではレキシカルスコープが採用されたため、クロージャーもサポートされることになるのですが、Schemeとは違い、付け足した感じは否めません。
奇しくも、Emacs Lispも後付けで、lexical-binding が導入されることとなり、Common Lispと似たような状況になっています。
実際のコードでの動作の違い
Emacsでのquote
とfunction
の違いですが、Emacs 24以降のlexical-binding宣言があるlambda
の場合に動作が違ってきます。
;; -*- lexical-binding: t -*-
(fset 'ffun
(let ((x 0))
#'(lambda ()
(setq x (1+ x))
x)))
(fset 'qfun
(let ((x 0))
'(lambda ()
(setq x (1+ x))
x)))
をファイルに書いて、M-x load-file し、
(qfun)
と(ffun)
を実行してみると、qfunの方ではクロージャーが作れないことが分かります。
これは、quoteの方は単なるリストだからで、functionでなければクロージャーを作ることはできません。
コーディングスタイル
Common Lispでは、関数は、#'foo
と書くことが多いと思いますが、'foo
でも間違いではありません。
#'foo
と記述した方が効率良くコンパイルできたり、エラーが発見しやすくなることはあると思います。
lambda
に関しては、Emacs Lisp、Common Lispともに(lambda (x) x)
と書くと、#'(lambda (x) x)
に展開されるマクロになっています。
Common Lispではlambda
には#'
は付けないことが多いようです。また、Emacs Lispと違って#'
の代わりに'
を使うことはできません。
#'foo
だと foo関数が定義されていなければ警告が出るというのがあります. 一方'foo
と書くと警告は出ません.