追記
ときには、2つのヘッダがお互いをincludeしたくなるケースが出ます。
典型的には、2つの構造体(struct)またはクラスが、互いを参照しているようなケースです。
たとえば、グラフ構造を表現するプログラムを書いているときに、節点(Node)と枝(Edge)の構造体があって、Nodeの定義の中にEdgeを登場させたい、一方でEdgeの定義の中でNodeを登場させたい、ということかずあったとしましょう。
コンパイラはファイルを先頭から最後まで順に処理するので、NodeとEdgeのどちらを定義するのか、決めないといけません。Nodeを先に書いたとしましょう。
そうしたら、Nodeの中でEdgeを参照したいときには、Edgeの定義をまだ読み込んでいません。
このような場合に使える技として、「定義」ではなく「宣言」を先に済ませる、というのがあります。
次のように書きます。
class Node; // Nodeの宣言。定義は後ほど登場する。
// 宣言により、"Node"がコンパイラに型名として認知される。
class Edge { // Edge の定義。Edgeの内容を記述する。
public:
// Node の宣言しか、コンパイラは見ていない。
// この状況でも可能な操作は、Nodeのポインタ型の変数の定義。
// どの型のポインタも同じサイズなので、何かのポインタ、という情報だけで、
// コンパイラは記憶領域のサイズを決定したり、コピー処理の命令を作り出せる
// それ以上のことは、何もできない。
Node *getSourceNode();
Node *getDestinationNode();
void setSourceNode(Node *n);
void setDestinationNode(Node *n);
private:
Node *source_node_;
Node *destination_node_;
// ファイルを下まで読むと Node には inward_edge_count_ なるメンバが
// 定義されていることがわかるが、この行を処理している時点ではコンパイラは
// それを見ていないので、たとえば source_node_->inward_edge_count_ = 0;
// などと、ここに書くと、コンパイルエラーになる。
};
// あとから、Nodeを定義する
class Node {
public:
int getOutwardEdgeCount();
Edge *getOutwardEdge(int edge_index);
void addOutwardEdge(Edge *e);
int getInwardEdgeCount();
Edge *getInwardEdge(int edge_index);
void addInwardEdge(Edge *e);
private:
// このNodeから出ていくedge
int outward_edge_count_;
Edge *outward_edges_[10]; // 最大10個まで記憶できる
// このNodeに入ってくるedge
int inward_edge_count_;
Edge *inward_edges_[10];
};
このような書き方をすれば、相互に参照しあう型を定義できます。
上記の2つのクラス NodeとEdgeは、互いに密接に関係していて、つねにセットで
使われるでしょうから、典型的には1つのヘッダファイルに、2つのクラスを書きます。
NodeとEdgeを別々のヘッダファイルに分けて書くことも可能です。その場合には次のようにします。
- Edge.h の中には Nodeの宣言とEdgeの定義を入れます。
- Node.h の中には Edge.hのinclude指令と、Nodeの定義を入れます。
ファイル間の参照関係はあくまでも一方通行であり、どちらにどちらを参照させるのかは、設計者がしっかり決める必要があります。
C/C++はそういう言語です。
これがたとえばjavaだと相互に参照してもOKですね。コンパイラがファイルを読む読み方が、C/C++とはだいぶ違うので。