CPUがZ80やi8060などが主流だったころ、同じレジスタどうしをXORするとゼロになるというテクニックはよく利用されていました。

x86でeaxレジスタをゼロクリアする例です。

    B8 00 00 00 00   mov         eax,0
    33 C0            xor         eax,eax

`xor`の方がバイナリが小さいですし、実行に必要なCPUサイクルも少なかったと思います。

次のようなCのコードを試してみました。

    volatile short x;
    x = 0;
    printf("%d\n", x);

変数にゼロを代入しています。このコンパイル結果は以下の通りです。(結果はコンパイラによって異なります)

    33 C0            xor         eax,eax 
    66 89 04 24      mov         word ptr [esp],ax 

ゼロを代入するコードを書いたのに、コンパイラが自動的に`xor`を行うバイナリを生成してしまいました。

あと、直接は関係ありませんが、代入先の変数は16ビット(`short`)なのにレジスタは32ビット(`eax`)が使用されています。メモリに書き込む時点で16ビット修飾(`word ptr`)されています。なかなか興味深いですが、このやり方が最も効率的だと、コンパイラが判断したのでしょう。

以上のように、機械語レベルでどんな命令が採用されるかは、コンパイラが決定します。Cのソースがゼロ代入でも、コンパイラがXORに変更してしまう、といった具合です。ずっと昔に有効だった細々したテクニックは、今のコンパイラには実装済みなのです。

今でも、組み込み向けマイコン(マイクロコントローラ)では、もしかしたら有効なテクニックかもしれません。それでも、アセンブリ言語に限った話です。現代のコンパイラを使用したプログラミングであれば、人間にとって分かりやすい書き方をすれば、自動的に最良のバイナリが生成されます。無理して古い時代の裏技を使おうとすると、かえって悪い結果を招く恐れがあります。