まず [CMOS][1] ってのは特性の反対な [MOSFET][2] を2つペアにしたものです。 MOSFET の構造上、ゲートってのはキャパシタ相当と思ってよくて、よって電圧が一定である条件では充放電が生じない=電流が流れないという特徴があります(厳密には漏れ電流が必ず生じるので pA ピコアンペアくらいは流れるのですが、この例では無視できる)なので「基本動作を理解する」という点においては電流のことは忘れてしまって問題ないです。電圧だけ考えればOK 電圧に変化がないときは電流が流れない=消費電力が少ないってことなので、今どきのマイコンはすべてこの CMOS 構造になっています。その昔の [TTL][3] とか [ECL][4] ってのは電流で制御するので消費電力が大きく、すなわち発熱するので今ではすたれてしまいました( ECL で作られた [Cray-1][5] は基板がフロン冷媒に浸かっているありさま) で、この回路なんですが、その目的は ・なにかのトリガ(スイッチを押す)を機に、一定時間 L を出力したのち H に戻る信号を出す というものです。名称からして「リセット信号」のようですね。書いてある通り、リセット信号= L でリセットするようなマイコンがあるとき、そのリセット信号を与えるためのものです。 \# リセットとは全ハードウエアを初期状態に戻してプログラムを最初から実行するものです。 マイコンソフトがバグっているなどの理由によりリセットをかける目的で、このリセットスイッチを押すと「リセット信号」が L になります。リセット回路が動作するにもそれなりの時間が必要なので、しばらく L を維持しなければなりません。そののちリセット信号が H になるとリセット状態が解除され、プログラムは最初から動作をやり直すことになります。 んで、説明のための説明としてこのような回路が書かれていますが「パワーオンリセット」(と図にはある)のための回路としては、この回路図は絶対に実用してはいけません。パワーオン中ならびにパワーオフ中(電源電圧が所定の電圧未満になる状況)では 74HC14 も正しく動作する保証がないためです。 パワーオンリセット(パワーオフリセット)周りはデジタルであるはずのマイコン回路のなかで例外的に純アナログな回路なので、ある意味ノウハウの塊です。とりあえずこの回路図は「説明のための説明」「解説のための解説」として割り切ってください(ソフトウエアの入門書でも初心者は詳細を知らなくてもよさそうなところを解説省略している場合がありますが、ここはまさにそんな感じ)繰り返しますが絶対に実用する回路にこんな設計しないでください。うまくリセットがかからないなどの不具合が必ず発生します。 [1]: https://ja.wikipedia.org/wiki/CMOS [2]: https://ja.wikipedia.org/wiki/MOSFET [3]: https://ja.wikipedia.org/wiki/Transistor-transistor_logic [4]: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%BF%E7%B5%90%E5%90%88%E8%AB%96%E7%90%86 [5]: https://ja.wikipedia.org/wiki/Cray-1