Ruby Instnallerの64bit最新版 3.1.1-1 (x64) を使用しているという前提でお話しします。もし、違っている場合は、この回答は無視してください。
Ruby InstallerはMSYS2の開発環境を用いてRubyをビルドします。以前は、MSYS2にmingw32とmingw64の二つの開発環境しか用意されていませんでしたが、現在はclang32、clang64、ucrt64の三つの開発環境が追加されました。clangはMingw-w64 GCCの代わりにClangを用いる物ですが、ucrt64はmingw32やmingw64と同じくMingw-w64 GCCを用います。そのような経緯もあって、Ruby Istallerの64bit版は、3.0系まではmingw64でしたが、3.1系からはucrt64に変更になりました。ruby -v
と実行してプラットフォームがx64-mingw-ucrtになっている事が確認できるかと思います。
問題はこのucrt64版(x64-mingw-ucrt)です。Bundlerはplatform
でmingwやmswin等を指定できます。しかし、この機能はucrt64には対応していません。x64_mingwと指定しても、これはmingw64版の指定であって、同じくMingw-w64 GCCを用いていると言っても、ucrt64版は対象では無いと判断されます。現在の所、Bundlerにucrt64版を指定するplatform
に渡すオプションは存在しません。
ここでRalisに関わる問題が発生します。Railsはタイムゾーン情報を時刻を扱うためにtzinfoというgemを使います。このtzinfoをWindowsで使用する場合、Linuxとは違ってOSにタイムゾーンの情報のファイルが存在しないため、tzinfo-dataという別のgemが必要になります。そのため、Railsで生成されるGemfileでは、platform
でWindows環境になるプラットフォームを指定してtzinfo-dataが使用するようにしています。しかし、このplatform
の指定ではucrt64版は対象とはならないため、tzinfo-dataが読み込まれず、railsの実行に失敗する状況になっていました。
根本的に修正されるにはBundler側がucrt64版に対応することとRails側がucrt64版でもtzinfo-dataを対象とするように初期のGemfileを用意するようにすることの二つが必要です。どちらにもissuesにすらあがっていないようですので、対応にはしばらくかかると思われます。
Bundler側とRalis側で対応されるまでは時間がかかりますので、それ以外の解決方法を三つほど紹介します。
Gemfileでtzinfo-dataを読み込むようにする。
ucrt64版であっても、Gemfileでtzinfo-dataを読む込むようにすれば良いとなります。まずは、下記のようなtemplate.rbを用意します。
data = File.read('Gemfile')
data.sub!(/^.*gem "tzinfo-data".*$/, 'install_if(-> { RUBY_PLATFORM =~ /mingw|mswin|java/ }) { gem "tzinfo-data" }')
File.write('Gemfile', data)
そしてrais new アプリ名 -m template.rb
として作成すれば、エラー無く完了できるはずです。
どうしてこれでうまくいくかは、エラーになるときとのGemfileと比べてみることでわかるはずです。
ucrt64版以外のRubyを使う。
例えば、32bit版はmingw32であるためこの問題は起きません。また、MSYS2でもRubyのパッケージが存在し、mingw64版Rubyを使うという方法もあるでしょう。
3.0系のRubyを使う。
3.0系まではmingw64版ですので、問題は起きません。
Linux環境にする。
Linux環境であればtzinfo-dataそのものが不要になり、問題になることはありません。Windowsの環境であればWSLを用いたり、Hyper-VやVirtualBox等の仮想環境でLinuxを用意すると良いでしょう。
他にも、Ruby 3.0系を使うという方法もあります。どうしても3.1系を使いたく、そして、なるべくこのようなエラーになるべく出くわしたくないという場合は、WSL上でアプリケーションを作成・開発すると良いでしょう。