出力が欠けることはありませんが、出力元のプログラムの動作によっては、行の途中でログが混じる可能性があります。ただし、条件やタイミングがかなりシビアなため、発生は極めて希だと考えられます。
以下は割り込みを確認するためのテスト用のプログラムです。(Rubyで書いていますが、ログファイルに書き込むところのsystem
メソッドはシェルのリダイレクトが使用されます)
slow_print.rb
str = ('0'..'9').to_a.join + ('A'..'Z').to_a.join + ('a'..'z').to_a.join
str.each_char do |c|
print c
$stdout.flush
sleep 0.1
end
puts
multi_rediret.rb
10.times.map do
fork do
system('ruby slow_print.rb >> test.log')
end
end.each do |pid|
Process.waitpid(pid)
end
上記二つのファイルを置き、Rubyがインストールされた環境で、ruby multi_redirect.rb
と実行するとtest.logが書き込まれます。slow_print.rbのみ実行した場合は
0123456789ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZabcdefghijklmnopqrstuvwxyz
の一行になります。>>
によるリダイレクトションが排他処理を行うのであれば、上の行が10個書き込まれるはずですが、実際のtest.logは
000000000011111111112222...
というように、それぞれの間に挟み込まれた物になります。つまり、排他処理はされず、それぞれのプログラムは、それぞれ勝手なタイミングに書き込みを実行し、行が混じる事があります。
上のプログラムは一文字ずつ打つのに0.1秒待っており、その度フラッシュまでしています。これはわざと割り込みさせるためにしており、実際にはあまりないプログラムです(プログレスバーを表示する場合などでは使われていますが)。実際のプログラムは一行単位でフラッシュすることが多いです。そのためあ、一行を一回のシステムコールで書き込もうとします。その場合は、その処理の途中に割り込んで別のプロセスの書き込むことはありません。しかし、一回のシステムコールではバッファサイズ(Linuxの場合の標準は4096)までしか書き込めないため、書き込み量が多い場合は、一回で書き込まれず、他のプロセスにわりこまれる可能性はあります。(一行一行が短くても、複数行をまとめてフラッシュすると行の途中でシステムコールがわかれるといこともあり得ます。)
ということで、実際の所、行の途中で割り込まれるようなログになることは極めて希だと考えられます。また、ログは、基本的には、問題があったときの調査に使用するぐらいですが、ログの行が混じっていた場合でも、前後から本来の行を取り出すことは可能だと考えられます。しかし、ログ内容を分析集計する場合は、そのようなログが邪魔になってしまうことも確かです。そういった分析が前提であれば、別の方法(ログ出力は一つのプロセスだけがするようにするとか、syslog経由にするとか)を考える必要があります。
行の途中でログが混ざる例を見たことが無い人がほとんどかと思いますが、私は、一つだけそのようなログを吐き出す商用ソフトウェアを知っています。ただ、それはWebアプリケーションで、CGI(クローズドソースのバイナリ)で動くものでした。そのWebアプリケーションには認証などの機能があり、認証ログや動作ログ等が独自のログファイルに書き込むようになっていました。アクセス元の統計や分析のために認証ログを解析しようとしたときに、異常な行が希に現れる事があって、詳しく見ると行の途中でログが混じっているという物でした。ただ、発生は非常に希であり、統計的な分析には影響はほぼ無く、また、インシデント発生時の調査にも支障を来さなかったため、サポートへの不具合報告はしませんでした。
多数の利用者がいるWebアプリケーションのCGIであるため、同時実行はかなりの頻度で発生します。ソースコードが公開されていない商用ソフトウェアと言うことで詳細は不明ではありますが、行の途中で別のプロセスが割り込んだ結果だと考えられます。