1番目
sprintf("SELECT * FROM table WHERE id = %d", $value);
$value
にどのようなデータが入っていようが、PHPの「親切な」型変換により数値に変換されます。escape()
が無くても問題ありません。
"123" => 123
" 123" => 123
"123abc" => 123
"abc" => 0
" " => 0
"" => 0
null => 0
ただし、4つめ以降の例はアプリケーションとしては意図しない動作になるでしょうから、その観点では事前にバリデーションが必要です。
2番目
sprintf("SELECT * FROM table WHERE id = %s", escape($value));
1番目の%d
を%s
に書き換えescape()
を付加した例です。$valueはリテラルではなくSQL構文の一部として展開されます。例えば$value
が1 or 1 = 1
であれば
SELECT * FROM table WHERE id = 1 or 1 = 1
となります。escape()
は文字列リテラルのためのエスケープですから、この場合SQLインジェクション防止には役に立ちません。上記は適切にエスケープが行われた結果です。
3番目
sprintf("SELECT * FROM table WHERE id = '%s'", escape($value));
$value
は文字列リテラルとして展開されます。escape()
で文字列リテラルとして正当な形式にエスケープされるので安全です。
以上はSELECTを例にしていますが、INSERTであってもサブクエリを用いたりRDBによっては複文が使えたりするので、同様に攻撃が可能です。
sprintf
を使用したSQL組み立ての問題
このように、sprintf
でのSQL組み立ては、
- 数値型と文字型で書式指定子を確実に指定する。
%s
で受ける場合は、'%s'
とシングルクオーテーションを忘れてはいけない
- エスケープ処理を確実に行わなければいけない(ただし
%d
で受けるときは必須ではない)
と言うことにプログラマが注意する必要があります。不注意によりこれらを間違えると脆弱性が生じます。
プレースホルダを使用する場合はSELECT * FROM table WHERE id = ?
のように文字列であっても引用符無しで?
を指定しますがこれに引っ張られて裸の%s
を指定したり、%d
を用いた際の型変換によるSQLインジェクション防止を拡大解釈し、sprintf
を用いるときはエスケープ不要であると誤解している例もあります。
プレースホルダを用いたバインドメカニズムを使うべき、とされるのは、仕組み上安全なことが保証されており、プログラマの不注意により脆弱性が生じるようなことがないからです。そのあたりの詳細はIPAの安全なSQLの組み立て方を参照してください。