ソースコードや提示されているリンクから、 AWS SDK for JavaScript v2 であるという前提で回答します。
こういうのは、だいたい API ドキュメントの方が正しく記述されていることが多いです。
と言うことで、早速見てみましょう。
https://docs.aws.amazon.com/AWSJavaScriptSDK/latest/AWS/S3.html#upload-property
Callback (callback
):
function(err, data) { ... }
Parameters:
- err (
Error
) — an error or null if no error occurred.
と言うことで、 エラーが発生しなければ err
パラメータには null
が入るというのが、実際の動作になります。
つまり、その型注釈は間違っています。
…と、それだけの回答だと寂しいので、実際に動作を試してみましょう。
AWS を利用するとお金がかかってしまうので、 S3 互換のオブジェクトストレージである MINIO を Docker でローカルに立ちあげて、 AWS SDK v2 でアクセスしてみます。
docker run --rm -d -p 9000:9000 minio/minio server /data
npm install aws-sdk
var AWS = require("aws-sdk");
var s3 = new AWS.S3({
credentials: new AWS.Credentials("minioadmin", "minioadmin"),
endpoint: new AWS.Endpoint("http://127.0.0.1:9000"),
});
var t = s3.listBuckets((err, data) => {
console.log({err, data});
});
このように、 listBuckets
も callback の err
パラメータは 非null 表記 であるのにもかかわらず、 実際の動作では err
パラメータに null
が入っていることがわかります。
…で、 何故こんなことになっているかというと、JavaScript API v2 の GitHub リポジトリを見ていただければわかるとおり、 元のソースは TypeScript ではなく、 JavaScript なんですよね。
このため、型の情報は JSDoc コメントで書かれている情報が元になっています。
(TypeScript もそうですが、) JavaScript の型定義ファイルによる型注釈は、 IDE のコード補完や Lint などに使われる一方で、コードの実行には何の影響も与えません。
このため、いくら err
パラメータが型注釈で 「null 非許容」 と宣言されていたとしても、実行時に null が入っていればそれは null として評価されます。
すなわち、 if (err) { /* エラーハンドリング */ } else { /* 正常な処理 */ }
と実装すれば、 正常な処理の方がキッチリ実行されます。
元々、 JavaScript は null 安全なコードを記述する世界ではないため、 JSDoc は null チェックを行わない動作がデフォルトです。
このため、 JSDoc によって生成された *.d.ts の中には、 null 許容型ではなくても null や undefined が返されてしまうものがよくあります。
なお、 TypeScript で再設計された AWS SDK for JavaScript v3 であれば、 コンパイル時に strict が指定されている (tsconfig.es.json, tsconfig.cjs.json) ので、この型注釈はかなり信頼できます。 (v3 の新機能としても明示的に書いていますし。)
このため、 v3 を使えば null 安全なコードを書くことができるはずです。