エラーになる直接の原因ですが、spawn()
の返すJointHandle
の型が、Xxxxx
が期待するJoinHandle
の型と合わないからです。前者はJoinHandle<impl Future>
で後者はJoinHandle<()>
になります。
では、なぜspawn()
がJoinHandle<impl Future>
を返すのか(つまり根本原因は何か)というと、Rustのasyncブロック(async { }
)やasync関数(async fn() {}
)は糖衣構文になっており、実際には戻り値型の値を直接返すのではなくて、戻り値型をfutureで包んだものを返すからです。asyncブロックなどから返されたfutureを実行して値を取り出すには、非同期ランタイムを使ってfutureを駆動する必要があります。
非同期ランタイムにはTokioやasync-stdなどいくつかありますが、今回はReqwestが直接依存しているTokioを使うのが楽でしょう。
まずCargo.toml
を以下のように修正します。
[dependencies]
reqwest = "0.11"
tokio = { version = "1", features = ["rt"] }
次にXxxxx
のrun()
を以下のように修正します。
pub fn run(mut self) -> Self {
let child = thread::spawn(move || {
// 非同期ランタイムを作成する。current threadランタイムは
// 現スレッド上で非同期タスクを実行するためのもの
let rt = tokio::runtime::Builder::new_current_thread()
.enable_all()
.build()
.unwrap();
// ランタイムで非同期タスク(asyncブロック)を実行する
rt.block_on(async {
let _ = fetch_something().await;
});
});
self.worker = Some(child);
self
}
これでspawn()
が返す値がJoinHandle<()>
になります。エラーが解消し、期待どおりに動作するようになります。
ところで、非同期ランタイムは複数の非同期タスクを並行して実行するためのものです。OSのスレッドに似たような機能を提供しますが、タスクの切り替えがスレッドよりもずっと軽量なことが特徴です。Reqwestを使うには非同期ランタイムが必要となり、それがOSスレッドよりも軽量なマルチタスクを提供するわけですから、std::thread::spawn()
は使わずに非同期ランタイムだけを使うのがおすすめです。
そのように書き換えましょう。まずCargo.toml
を修正します。
[dependencies]
reqwest = "0.11"
tokio = { version = "1", features = ["rt", "rt-multi-thread"] }
次にmain.rs
を以下のように修正します。
fn main() {
// 非同期ランタイム(multi threadsランタイム)を作成する
// このランタイムは複数のワーカースレッド(OSスレッド)を持ち、それらの上で
// 非同期タスクを実行する
let rt = tokio::runtime::Runtime::new().unwrap();
// 非同期ランタイムで実行する
rt.block_on(async {
let mut xxx = Xxxxx::new().run();
xxx.stop().await;
});
}
async fn fetch_something() -> Result<(), reqwest::Error> { /* 変更なし */ }
#[derive(Debug)]
pub struct Xxxxx {
// tokioのJoinHandleを使う
worker: Option<tokio::task::JoinHandle<()>>,
}
impl Xxxxx {
pub fn new() -> Self { /* 変更なし */ }
pub fn run(mut self) -> Self {
// std::thread::spawn()ではなく、tokio::spawnを使う
let child = tokio::spawn(async move {
let _ = fetch_something().await;
});
self.worker = Some(child);
self
}
// async fnにする
pub async fn stop(&mut self) {
// join()をawaitに変更する
&self.worker.take().expect("").await.expect("");
}
}
これでOKです。
最後に、main()
関数のところですが、Tokioが提供する#[tokio::main]
マクロを使うと、非同期ランタイムを作るところのコードを自分で書かなくてよくなります(コンパイル時にコードが自動生成されます)
Cargo.toml
を修正します。
[dependencies]
reqwest = "0.11"
tokio = { version = "1", features = ["rt", "rt-multi-thread", "macros"] }
main()
を以下のように修正します。
#[tokio::main]
async fn main() {
let mut xxx = Xxxxx::new().run();
xxx.stop().await;
}
これで完成です。
なお、Reqwestのblocking featureをオンにすると、.async/awaitを全く使わないブロッキングなクライアントが使えるようになります。何かの理由でstd::thread::spawn()
を使いたいときは、ブロッキングクライアントを使う方がコードが短くてすむかもしれません。
なお、ブロッキングクライアントは内部的には最初のコードと同じようにTokioの非同期ランタイムを使っています。