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世の中にはモナド則というものがあるようです。

The monad laws から引用します。

(return x) >>= f == f x
m >>= return == m
(m >>= f) >>= g == m >>= (\x -> f x >>= g)

さてこれを満たすために下記のようなコードを書いて練習しました。

コード説明: MayNullは自作のMaybeのようなもの。MyMonadは自作のMonadのようなものです。本来のHaskellにある >>= は 自作版では >>>>>, return は自作版では rrrrr に置き換えてあります。(この質問の回答例なども参考にしています)

f x = Have (x + 1)  -- 1増やす
g x = Have (x * 2)  -- 2倍にする

data MayNull a = Have a | Null deriving Show

class MyMonad m where
  (>>>>>) :: m a -> (a -> m b) -> m b
  rrrrr :: a -> m a

instance MyMonad MayNull where
    (Have x) >>>>> f = f x
    Null >>>>> _ = Null
    rrrrr = Have

上記が定義と実装部で下記がモナド則が実際に成り立っているのを試したコードです。

-- 左恒等性確認
-- (return x) >>= f == f x
rrrrr 3 >>>>> f   -- Have 4
f 3               -- Have 4

-- 右恒等性
-- m >>= return == m
(Have 3) >>>>> rrrrr -- Have 3
Have 3               -- Have 3

-- 結合法則
-- (m >>= f) >>= g == m >>= (\x -> f x >>= g)
(Have 3 >>>>> f) >>>>> g          -- Have 8
Have 3 >>>>> (\x -> f x >>>>> g)  -- Have 8

質問

これは、MaybeMonadを模倣したものなので、モナド則が保たれているわけですが、この状態からどこかを書き換えるとモナド則をくずせるものなのでしょうか?

本来であれば Applicative のインスタンスである必要もあるようですが、3つの法則とは関係ないと考えています。

まだ模倣の通りしか使っていくことができず、普通にプログラムを書いていったときに、どのようなタイミングでモナド則を崩してしまうのかしりたいと思っています。

つまりどこの部分にどのように注意してコードを書けばいいのかというようなことが気になっています。おそらく、instanceを実装しているときですよね?

instanceの実装さえミスがなければ fg はモナド則を満たさなくなってしまうことと関係ないと思っているのですがいかがでしょうか?

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  • ` (Have x) >>>>> f = Null` で自明に崩れると思いますが,そういうことではなさそうですか?
    – Yosh
    2020年9月2日 8:47
  • なるほど。崩れました。 (Have x) >>>>> f = f (x+1) でも崩れるかと思ったんですが、そもそもエラーになってうまくいきませんでした。確かに Nullを使えば簡単そうですね。結構カジュアルに崩れてしまうのもなんでしょうか? 2020年9月2日 8:50
  • また質問に書いたとおり、 instance の実装部だけ気を使って書けばあとは心配ないのかが気になっています。 2020年9月2日 8:51

2 件の回答 2

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すみません、補足記事を書いていたら非常に遅くなってしまいましたが、コメントにも回答にも明確に回答されてないとおぼしき部分について回答させてください。

つまりどこの部分にどのように注意してコードを書けばいいのかというようなことが気になっています。おそらく、instanceを実装しているときですよね?

instanceの実装さえミスがなければ fやg はモナド則を満たさなくなってしまうことと関係ないと思っているのですがいかがでしょうか?

ご認識のとおりです。
Monad則はあくまでも>>=returnについての規則であるため、>>=return引数が、つまりfgがどうなっていようと関係ありません。が、そもそもあなたが自分でMonadのインスタンスを定義する必要さえないので、その心配自体が杞憂だと思います。

世の中には無数のMonadが存在するように見えるかも知れません(し、広い意味のモナドは実際そうなのでしょうが)、Haskellプログラミングにおいて役に立つMonadは、数えるほどしかありません。
実際のところモナドの六つの系統[Functor x Functor] - モナドとわたしとコモナドという記事にあるものが概ねすべてです(分類方法そのものは一般的ではないですが)。世に広まるパッケージ見ていると、一見先ほどの記事にリストアップされていないMonadが見つかることがあります。ところがそれらはほぼ間違いなく、ここにリストアップされているMonadの単純なラッパーか、それらを組み合わせて別の名前を付けたり、何らかの用途に特殊化したものです。
独自に定義しているものがあったとしたら、それは恐らく効率のためであって、実質的な役割は先ほどの記事にリストアップされたMonadのうち、どれかに当てはまるはずです。もしリストアップされているものにどれにも当てはまらないものができれば、別途論文が書かれていると思います(というのも、実は「どれにも当てはまらない」のかどうか個人的にわからないSelect Monadというのがあるからです)。

とにかく、「Haskellプログラミングに役に立つMonad型クラスのインスタンス」というのはそれぐらい貴重なのです。(もっと広い意味の、本来の圏論における「モナド」はいろいろあるかも知れませんが、私は圏論には詳しくないのでその点は突っ込まないでください!)

少し話がそれましたが、そうした事情があるため、「モナド則を守れているかどうか」というのを意識する必要があるのは、少なくともそうしたライブラリーを作るようになったら、であって、純粋にMonadのユーザーである限りその必要はありません。

それはほとんどのHaskellプログラマーが経験しないことのはずです。
仮に経験したとしても、多分にそれは(先ほど触れたような)既存のMonadを元に独自定義する場合であって、大抵はコピペと少しの修正で済むでしょう。
DRY原則に従うなら、極力そんなことしたくないですよね?

それと、参考までにモナド則を破る例と、モナド則を破ったらどうなるのかについて、具体的な例を補足記事として書きましたので、良ければこちらもご覧ください。

Writer Monadで気軽にMonad則を破る - Haskell-jp

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return x = Null にしてしまうとか、(Have x) >>>>> f = Null にしてしまうとか、とにかく型があってさえいれば実装は色々できてしまうことを考えると壊れる例が作れます。

モナド則の良いところは、この規則を満たすように書いてしまえば後は様々な "モナド的な" 操作を気にせずに行えるところにあります。具体的には do 記法などです。それで良いことが(一定の仮定のもとで)証明できます。というより、モナド則から証明できることが "モナド的な" 操作として知られている、といった方が近いですが。

ただし、ある型に対して、モナド則を満たすような instance の定義はひとつではないことには注意が必要です。少しややこしいので詳細は書きませんが、たとえばリストのモナドはいくつかの instance を考えることができます。

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  • 「たとえばリストのモナドはいくつかの instance を考えることができます。」リストのApplicativeのインスタンスが複数あるのはわかるのですが、Monadにもありましたっけ? 2020年9月2日 23:54
  • よそでこちらの記事 qiita.com/1to100pen/items/1558a4d6600c47f7f859 を教えていただきました。失礼しました。 2020年9月7日 6:51
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    すいません、忙しくて返信するのを失念していました。リンクなさっている記事にもあるように、非決定的な計算に対応する通常のリストモナドの他、リストのリストを扱っていることを利用して他の実装を行うことができます。
    – nekketsuuu
    2020年9月22日 0:47

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