スレッドセーフ / atomic という用語の解釈次第なところがありますが、この手の話が問題になるのはメインメモリのほかにキャッシュを持つマルチコア CPU (ないしは SMP 構成) の場合に限定できるでしょう。
アトミックという用語は「その変数の1回の読み書きが他者に阻害されない」という意味でしかありません。よって、マルチコア/SMP 構成で、複数のコア / CPU が複数の変数を連続的に読み書きする場合に「順番が入れ替わったように観測される」ことによるスレッド安全性までは担保されません。
メモリバリア で説明されている、最近の高性能 CPU が持つ「アウトオブオーダー」な実行に対して、
ならばおそらく提示されたソースで十分です (x86 / x64 はこちらの状況にはならないと推測でき、検証するなら他の CPU で試す必要がある)
なら真にメモリバリアが必要で、その場合 alignas
ではおそらくダメで std::atomic
な指定が必要になると思われます。
検証例1
std::array<uint8_t, SIZE> a1;
alignas(size_t) std::array<uint8_t, SIZE> a2;
に対して
- cygwin64 の gcc-8.2.0 / 9.3.0 は
movb
を生成
- s2019 の cl.exe version 19.26.28806 for x64 は
mov byte ptr
を生成
メモリバリアな命令を生成していない (高速)
検証例2
std::array<std::atomic<uint8_t>, SIZE> ar3;
- cygwin64 の gcc-8.2.0 / gcc-9.3.0 は
movb
のほかに mfence
命令を追加生成
- vs2019 の cl.exe version 19.26.28806 for x64 は
mov
の代わりに xchg
命令を生成
メモリバリアな命令が生成されている (超絶遅い)
ということで std::atomic
にすると安全かもしれませんが超絶遅くなります。なので「スレッドセーフ」の意味をきっちり定義してから始めたほうがよさそうです。
この話は純粋にハードウエアレベルのことなので、コンパイラが c だろうと c++ だろうと golang だろうとあまり違いは無くてどの言語を使っても問題は発生します。
32bit CPU で同一データバス 32bit 内の違う 8bit に異なるスレッドから「単純 write 」を行ってもハードウエア上データは壊れません(そのように CPU は作ってあります) 安心してください。ただし「アトミックである型」でアクセスしたとき限定です。
struct test_type {
unsigned char a;
unsigned int x:4;
unsigned int y:8;
unsigned int z:4;
};
のようなものを作ったとしたら、おそらくは a
はアトミックですが y
はアトミックであることを期待してはいけません (アトミックになるかもしれないしならないかもしれない)
また原理的に read-modify-write になるアクションはアトミック操作になりえませんので注意。 ar[i]++;
のような書き換えは ar[i]
が char
型であってもアトミック操作ではありません。時と場合によっては処理系が InterlockedIncrement
みたいな API を用意していますので、これを使うしかないです。