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// Code 1
fn main(){
    for vect in vec![0,1,2,3,4,5,6,7,8,9].iter(){
        println!("{}",vect);
    }
}

例えば上記のコードを実行すると、縦に整列した10個の数字を得ることができます。同時に、

// Code 2
fn main(){
    for vect in vec![0,1,2,3,4,5,6,7,8,9]{
        println!("{}",vect);
    }
}

でも同じ結果を得ることができます。ここで本題ですが、Code 1Code 2では何が異なるのでしょうか?
またRustにおけるイテレータの存在意義とは?

自分の古巣のRubyにもイテレーターはありましたが、全てforで解決していたため、結局何のために(目標のデータを反復することには間違いない)用意されているのか疑問に思っていました。参考文献を読んでもイテレーターの存在意義を前もって知っている事を前提に書かれおり非常に悩んでいます。

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こんにちは。ちょっと長くなりますが、お付き合い下さい。

Code 1とCode 2の違い

まずは本題にお答えすると、Code 1とCode2では所有権の扱いが異なります。後程説明しますが、Code 1もCode 2も(内部的に)イテレータを使ったコードになっているので、イテレータを使うかどうかという違いはないです。

Code 1では vec! で作られた値を参照しており、 Code 2では vec! で作られた値を消費しています。これは1. vect の型が &i32i32 か、 2. for 式文のあとでベクトルが使えるかどうか、で違いが表われます。少しコードを書き換えて試してみましょう。

// Code 1
fn main(){
    // 一旦変数を束縛しておく
    let vec = vec![0,1,2,3,4,5,6,7,8,9];
    for vect in vec.iter() {
        // vecを参照しているので、要素も参照になる
        // vectは&i32
        let vect: &i32 = vect;
        println!("{}",vect);
    }
    // forのあともvecを使える
    println!("{:?}", vec);
}
// Code 2
fn main(){
    // 一旦変数を束縛しておく
    let vec = vec![0,1,2,3,4,5,6,7,8,9];
    for vect in vec {
        // vecを消費しているので、要素をそのまま取り出せる
        // vectはi32
        let vect: i32 = vect;
        println!("{}",vect);
    }
    // forのあとvecを使おうとすると所有権エラー
    // println!("{:?}", vec);

    // error[E0382]: borrow of moved value: `vec`
    //  --> iter.rs:8:22
    //   |
    // 2 |     let vec = vec![0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9];
    //   |         --- move occurs because `vec` has type `std::vec::Vec<i32>`, which does not implement the `Copy` trait
    // 3 |     for vect in vec {
    //   |                 ---
    //   |                 |
    //   |                 value moved here
    //   |                 help: consider borrowing to avoid moving into the for loop: `&vec`
    // ...
    // 8 |     println!("{:?}", vec);
    //   |                      ^^^ value borrowed here after move
    // 
    // error: aborting due to previous error
    // 
    // For more information about this error, try `rustc --explain E0382`
}

イテレータの存在意義

イテレータと for の関係

次にイテレータの存在意義ですが、一番分かりやすいのは for 式文のためです。for とイテレータは独立したものではなく、 for はイテレータを便利に使うための構文なのです。

Rustで for を書いたときは、コンパイラが裏で while let という構文とイテレータを使った表現に書き換えています。

// for
for e in v {
    // do something
}
// 上の式はこう展開される
let mut iter = v.into_iter();
while let Some(e) = iter.next() {
    // do something
}

Rubyも同様に for 文は each で書き換えられます(参考: 制御構造 (Ruby 2.7.0 リファレンスマニュアル)

RubyでもRustでも配列や範囲(start..end)など、違うオブジェクトを for で扱えるのはイテレータで抽象化しているからなのです。

その他の存在意義

イテレータの他の存在意義は

  1. 「くりかえせるもの」という概念を抽象化する
  2. for でやりがちな処理をメソッドとして共通化できる
  3. (Rustにおいては)パフォーマンス上のメリットもある

などが挙げられます。3は少し込み入るので1, 2についてだけ触れます。

1.「くりかえせるもの」という概念を抽象化するについて

Rubyだとダックタイピングがあるので意義が薄いですが、Rustだと概念の抽象化は必須です。例えばベクトルを拡張する extend メソッドはこういう型シグネチャをしています。

fn extend<I>(&mut self, iter: I) where
    I: IntoIterator<Item = T>,

イテレート可能なもの(正確には IntoIterator を実装している型ですが)ならなんでも引数にとれます。このおかげで、次のようにベクトルやスライス、範囲などさまざまなものを引数にとれます。

let mut vec = vec![1];
// Vec<T> を渡せる
vec.extend(vec![2, 3]);
// &[T] を渡せる
vec.extend([4, 5, 6]);
// Range<T> を渡せる
vec.extend(7..10);

このように、「くりかえせるもの」を値として扱いたいときに有用です。

2.for でやりがちな処理をメソッドとして共通化できるについて

そのままですが、よくある処理をメソッドとして共通化できると便利です。例えば「最初の5要素の和をとる」処理はイテレータを使えばRustでこう書けます。

vec.into_iter().take(5).sum()

同じことは for でも書けますが、 5つ数えたり合計値を収める変数を用意したり、ちょっと手間がかかりますよね?それらをメソッドにまとめることで手間を節約できます。あるいは、 zipのように for では少し書きづらいような処理もメソッドにできます。

まとめ

以上で vec![]vec![].iter() の違いと、イテレータの存在意義が伝わったでしょうか。蛇足になりますが、下に余談が2つ続きます。

余談

余談1 for vect in vec![..].iter() { /* ... */} について

先程説明したとおり、この式は以下のように展開されます。

let mut vec = vec![..].iter().into_iter();
while let Some(vect) = vec.next() {
    // ...
}

vec![..].iter().into_iter() という式が出てきましたね。イテレータを2回とっているようで無駄に見えるのは置いておきましょう。
注目するのは返り値です。この式は std::slice::Iter を返します。ところで、 Vec から std::slice::Iter を得るのは実は別のやり方があります。(&vec![..]).into_iter() でも同じものが出てくるのです。
つまり、 vec![..].iter() == vec![..].iter().into_iter() == (&vec![..]).into_iter() です。into_iterfor が勝手につけてくれるので、結局以下の2つの式は同等ということになります。

// .iter() を呼ぶやりかた
for vect in vec![..].iter() {
    // ...
}
// &をつけるやりかた
for vect in &vec![..] {
    // ...
}

Rustではイテレータを意識しない &vec![..] の方が好ましい書き方とされています。See explicit_iter_loop

余談2 内部イテレータと外部イテレータ

RubyのイテレータとRustのイテレータは実は種類が違います。Rubyのものは内部イテレータ、Rustのものは外部イテレータと呼ばれます。

Rubyのものは it.each {|e| ... } のように、処理をメソッドに渡してしまうスタイルです。これはイテレータ自身が繰り返し処理を担当します。

Rustのものは while let Some(e) = it.next() { ... } のように、他の制御構造と組合せて使うスタイルです。

今回の質問にこれらの違いが関係することはないのですが、両者をないまぜにしてイテレータのことを考えていると混乱しかねないので一言補足しました。

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  • 詳しい説明ありがとうございます。おかげさまで疑問が解決しました。今後もお世話になるとおもいますが、その時はよろしくお願いします。 – Remo Giazotto 6月9日 4:17

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