1.はその通りです。172.から始まるIPは日本国内には割り当ていなかったと思いますが、米国などでは普通に割り当てられています。組織内からある海外のサイトにだけアクセスできないから調べてくれという話で調べたら、172.0.0.0/8の範囲をプライベートアドレスとして使っていたという事例を聞いたことがあります。
2.はちょっと質問の意味がわかりません。RFC1918範囲外をプライベートアドレス扱いにする問題は1.に書いたとおりです。
3.についてはちょっと歴史的な経緯を理解する必要があります。詳しく書きます。
TCP/IPは現在におけるインターネット、つまり、これまで組織毎に独立して作れていたネットワーク間を結ぶために作られたプロトコルです。IPアドレス全体は0.0.0.0~255.255.255.255が使えますが、これを各組織に振り分ける必要がありました。そこで考えたのがクラスという考えです。クラスという単位でIPアドレスを分割し、組織の大きさによってクラスA(ネットワークアドレス長8)、クラスB(同16)、クラスC(同24)という単位で振り分けていきました。また、どのIPアドレスがどのクラスかわかるように第一オクテットでわかるようにしました。0-127がクラスA、128-191がクラスB、192-223がクラスC、224-239がクラスD(マルチキャスト用)、240-255がクラスE(将来の予約領域)という風にです。
インターネットがネットワークのデファクトスタンダートになっていき、対応した機器やソフトウェアも増えていくと、インターネットに接続しないが、インターネットと同じ仕組み、つまりはTCP/IPを使用してプライベートなネットワークを構築したいという要望が出てきました。そこで、各クラスにインターネットでは割り当てない、プライベートなアドレスを用意することにしました。クラスAは1個、クラスBは16個、クラスCは256個用意し、ネットワークの大きさによって使い分けるようにしたのです。
ここで重要なことは、クラスA、クラスB、クラスCはそれぞれネットワークアドレス長が固定であったと言うことです。第一オクテットでどのクラスか判別できるため、ネットワークアドレス長の設定(言わばネットマスクのような設定)が不要であったとも言えます。だから、クラス毎にプライベートアドレスを用意する必要があったと言えます。
やがてインターネットの需要が高まるとクラス毎にネットワークアドレス長を固定化することは柔軟な運用を妨げることがわかってきました。クラス毎固定をやめ、可変長で割り当てられるように可変長サブネットマスクやCIDRというものが提案され、使われていくことになります。
さて、上の話を踏まえて答えましょう。10.0.0.0/8だけを使えばいいと言いますが、組織内でもネットワークを複数に分けたい場合があります。しかし、クラスに従っていた(CIDRが無かった)ときは10.0.0.0/8を分割することはできません。10.1.1.0/24と10.2.2.0/24を使おうというのができなかったのです(現在は、CIDRに対応していない機器やソフトはぼぼ存在しないのでできますが)。つまりは、クラスCで十分な小さいネットワークが二つなら、192.168.1.0/24と192.168.2.0/24を使うとせざるを得ませんでした。
では、現代においてどうなのかというと、クラスにこだわる必要は全くありません。ただ、歴史的に192.168.1.0/24あたりから始めている場合は、ネットワークを増やすにしても192.168.2.0/24・・・と増やしていく傾向にあると思います。これは内部にあるシステムが組織内か組織外かの区別するのに192.168.0.0/16であるかどうかでしか設定していない場合があったりするからです(実際に172.16.0.0/12を使い始めたら、見えないサーバーが出てきたというトラブルに遭ったことが私はあります)。既存が存在しない、全くの新規であれば、10.0.0.0/8を分割していく形でも良いでしょう。ただ、最近はdocker等サーバー内部でプライベートアドレスを使っている場合も増えてきていますので、それらと被らないように慎重に選択する必要はあります。
172.16.0.0/12
を172.16.0.0/8
とすると不都合があるとすれば」というのは、何故172.16.0.0/8
(というか172.0.0.0/8
?) では駄目なのか、という意味でしょうか?