golang において、列挙型を定義するときに、 iota を使うことで、自動インクリメントして値を付与できる、みたいな記述をウェブで見つけました。
質問
- iota, とはどういう意味合いの言葉なのでしょうか? というのも、例えば const, enum, int などは何かしらの略語であるので、ある意味覚えやすいのですが、 iota がなぜ iota なのかが自明ではないなと思い、質問しています。
iota(イオタ)はギリシャ文字 ι を指す単語です。iota によって「ひとつずつ増える整数値の列」を示すプログラミング言語は Go 以外にも C++ の std::iota
や Scheme の iota
、そして APL の ⍳
などがあります。
Go の iota
は APL に由来していると言って良さそうです。というのも Go の設計者の 1 人である Rob Pike 氏の話によると、まず同じく設計者である Ken Thompson 氏が iota
という名前を提案したところ設計者 3 人(Ken、Robert、Rob)全員が APL のインタプリタを実装したことがあったため合意に至った、と書いているからです。
では APL の ⍳
はどういう由来なのでしょうか。APL の作者 Kenneth Iverson 氏はチューリング賞講演 "Notation as a Tool of Thought" で "integer"(整数)の頭文字 i から転じたと示唆しています。
For example, the integer function denoted by
⍳
produces a vector of the firstn
integers when applied to the argumentn
, ...
他の説として、慣用的に "one iota" には「最小の量」という意味があるからではないかと書かれていたり、『素数夜曲』†に "index" の頭文字 i から転じたと書かれていたりします。
†『素数夜曲 女王陛下のLISP』(著:吉田 武、第1版)の p. 474 脚注より引用
なおこの名称は,「その内容である index の頭文字を採用するに当たり,より印象的にする為に対応するギリシア文字イオタ ι を用いたことに因る」とされている.
直接的にはSchemeのiota関数(源流はAPL)あたり由来でないですかね。意味は「i」に相当するギリシャ文字。