遅延評価されようがされまいがブロック内の各変換の処理回数が同じです。最終的に全てを処理するのであれば、ブロック内の処理自体回数が減ると言うことはありません。かといって、それ以外の部分の影響を考えるのであれば、より多くのmapを重ねるなど工夫をしないど有意義な差異を見つけることは難しいです。また、最終的な演算結果が同じで無ければ、パフォーマンスが優れているかの比較にはなりません。
以上を踏まえて、ベンチマークを作り直しました。
# frozen_string_literal: true
require 'benchmark/ips'
module Convertize
refine Integer do
def collatz
if self.even?
self / 2
else
self * 3 + 1
end
end
end
end
using Convertize
MAX_NUM = 10_000
REPEAT_COUNT = 10
METHOD = 'collatz'
SCRIPTS = {
'repeat map' =>
'list = list' + ".map{|n|n.#{METHOD}}" * REPEAT_COUNT,
'repeat map!' =>
'list' + ".map!{|n|n.#{METHOD}}" * REPEAT_COUNT,
'repeat map lazy' =>
'list = list.lazy' + ".map{|n|n.#{METHOD}}" * REPEAT_COUNT + '.to_a',
'repeat map + assign' =>
"list = list.map{|n|n.#{METHOD}}\n" * REPEAT_COUNT,
'repeat each + push' =>
"temp = [];list.each{|n|temp << n.#{METHOD}};list = temp\n" * REPEAT_COUNT,
'repeat each_index + replace' =>
"list.each_index{|i|list[i] = list[i].#{METHOD}}\n" * REPEAT_COUNT,
'one map' =>
'list = list.map{|n|n' + ".#{METHOD}" * REPEAT_COUNT + '}',
'one each + push' =>
'temp = [];list.each{|n|temp << n' + ".#{METHOD}" * REPEAT_COUNT +
'};list = temp',
'one each_index + replace' =>
'list.each_index{|i|list[i] = list[i]' + ".#{METHOD}" * REPEAT_COUNT + '}',
}.freeze
p SCRIPTS
list = (1..MAX_NUM).to_a
eval(SCRIPTS['repeat map'])
EXPECTED_LIST = list.freeze
Benchmark.ips do |x|
SCRIPTS.each do |name, script|
x.report(name) do
list = (1..MAX_NUM).to_a
eval(script)
raise unless list == EXPECTED_LIST
end
end
x.compare!
end
手元の2.4.2での結果は下記のようになりました。
Comparison:
one map: 108.6 i/s
one each + push: 108.6 i/s - same-ish: difference falls within error
one each_index + replace: 105.9 i/s - same-ish: difference falls within error
repeat map!: 59.4 i/s - 1.83x slower
repeat map: 57.2 i/s - 1.90x slower
repeat each + push: 54.0 i/s - 2.01x slower
repeat each_index + replace: 49.7 i/s - 2.18x slower
repeat map + assign: 47.9 i/s - 2.27x slower
repeat map lazy: 38.9 i/s - 2.79x slower
ブロック内処理の部分は一応意味があるコラッツ数列の次が作られるようにしています。MAX_NUM
やREPEAT_COUNT
を変える事で、配列の大きさやmapを繰り返す数を変更できます。
では、結果を踏まえた推測をします。
最も速いのはmap
を一回で行う処理(one map)です。map
はその処理毎に配列を生成し、要素を埋めていくことになるため、それ自体にそれなりのコストがかかります。map
を複数回繰り返す処理(repeat map)では、そのコスト分がのしかかっていると考えらます。
と言いたいところですが、そうであれば配列を生成せずに置き換えていくmap!
を使った処理(repeat map!)はもうちょっと速くてもいいと思われます。repeat系のその他もさほど変わらないところを見ると、ブロック自体の処理のコストとも考えられます。one系でのブロック呼び出しはMAX_NUM
ですがrepeat系のブロック呼び出しはMAX_NUM * REPEACT_COUNT
と大きく異なりますので、その差分があらわれたとみても良いでしょう。
最後にlazy
は一番遅いです。これは、最後の配列にする段階で、一つ一つ戻りながら処理をしていくためと考えられます。Arrayの作りなどが通常の正格評価を想定しており、遅延評価でパフォーマンスが出るように作られているわけではないためではないかと推測されます。ただし、配列を全て出さずに最初の1個だけ求めると言った場合は、one mapの十倍以上の速度をたたき出すことができます。
Rubyのmap
は配列を毎回生成するため遅いという意見もありますが、実用面では十分なほど高速であり、ほとんどの場合は問題になりません。生成コストをなくすためにmap!
を使ってもほとんど変わりません。処理を一つにまとめればそれなりの速度向上は望めますが、通常のコードでは微々たるものでしょう。むしろlazy
は使い所が限られます。配列を全て求める場合などは逆に遅くなる場合が多いでしょう。全部では無く最初の一部だけ求める場合等以外では使わない方が良いかと思われます。
repeat map
≈each_with_object
> repeat each となり、mapが繰り返しループするならeach_with_object
>repeat map
≈each_with_object
となると思ったのですが、実際にはrepeat each
≈each_with_object
>repeat map
となりました。repeat map
がrepeat each
よりも明らかに遅い理由がわかりません。