そのサンプルはお世辞にも良いとは言えないですね。未定義動作ですから。
ここのストーリー的には2つのことが同時に挙げられているので余計にわからなくなってます。まずは1つ目
サンプル
int f1(), f2(), f3();
int x = f1() + f2() * f3();
乗算と加算では乗算を先に行うわけですが、関数の呼び出し順序はそれとは無関係です。コンパイラは下記のどのコードを生成しても良いことになっています。
f1()
→ f2()
→ f3()
の順に呼び、最後に乗算→加算する
f2()
→ f3()
の順に呼びだし乗算して f1()
を呼び加算する
f3()
→ f2()
→ f1()
の順に呼び、最後に乗算→加算する
- その他
関数に副作用があって、その発生順に意味があるときには注意が必要です。よく例に出されるのはマルチバイト文字の処理 cp932
の全角を取り出したい場合に
mbc = (getchar()<<8) | (getchar()); // 82 A0 の順に読み取って 82A0 にしたい
としてしまうとバグってしまう場合があります。コンパイラは 右の getchar()
を先に発行してもよいからです。そういう処理系では結果は 0x82A0
でなくて 0xA082
となり文字化けします。評価順を確定させるには式を分けるのが一番簡単で
mbc = getchar()<<8;
mbc |= getchar();
次に
デクリメント演算子や代入演算子で変数の値が変化することを「副作用」 side-effect と言います。「式文」の主目的はこの副作用を得ることです。 c c++ では、最適化の余地を最大にできるよう、この発生順序が決まっていません。
int x=f1(), y=f2(), z;
z=++x * y--;
2行目の式には副作用が3つあります。
x
の値を +1
する
y
の値を -1
する
z
の値を乗算の結果( +1
した後の x
の値と、 -1
する前の y
の値の積)とする
この副作用が具体的にいつ発生するかは未規定 unspecified です。下記のどれも正しい動作です。ほとんどの場合にはどれであっても問題ありません。
x
の値を +1
して→乗算し→ y
の値を -1
し→乗算結果を z
に代入する
x+1
の値を求めて→乗算結果を z
に代入し→ y
の値を -1
し→ x
の値を更新する
y
の現在値を一時保存し→ y
の値を -1
し→ x
の値を +1
し→ 乗算結果を z
に代入する
- その他
提示例題の場合も副作用が3つ [n
を -1
する] [n
を -1
する] [n
に除算結果を代入する] があり、どの順に発生させてもかまわないわけです。ですが、ここで言語仕様「副作用完了点と副作用完了点の間にて、1つのオブジェクトに複数の副作用が発生させるのは未定義動作」から、このプログラムはどんな結果になってもかまいません(例外発生して終了するのも、除算結果が 42
になってもかまいません)
サンプルに出すにはよくないコードに当たってしまいましたね。ひとまずそのダメコードは忘れましょう。ダメなコードを書くと予想外な結果が出てしまうのが c c++ であると体験できたので良しとしておきます。