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スタックに "Trait を実装したオブジェクト" を格納したいです。
Rust では Vec をスタックとして使うのが通例だということで、以下のコードを書いたのですが、Trait のサイズがコンパイル時に定まらないので Vec には格納できません。 (コンパイルエラー)
代替案、または解決策はあるでしょうか。

trait Trait<T>{}

struct Struct<T> {
    a: Vec<Trait<T>>
}

fn main() {}

コンパイルエラーのメッセージは以下です。

error[E0277]: the trait bound `Trait<B> + 'static: std::marker::Sized` is not satisfied.
  = note: `Trait<B> + 'static` does not have a constant size known at compile-time
  = note: required by `std::vec::Vec`

2 件の回答 2

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よくある問題ですね。これには2つ解決策があります。ジェネリクスとトレイトオブジェクトです。

ジェネリクス

Structに型引数を追加して、実装している型も受け取るスタイルです。今回ちょっと難しいのはTrait自身が引数を取る(のとRustが高階多相をサポートしていない)のでPhantomDataというダミー用のフィールドを足してunused type parameterエラーを防ぐ必要があります。

use std::marker::PhantomData;

trait Trait<T> {}

struct Struct<Impl, T>
    where Impl: Trait<T>
{
    a: Vec<Impl>,
    phantom: PhantomData<T>,
}

fn main() {}

トレイトオブジェクト

もう1つはトレイトオブジェクトで、雑に言うとBoxで包んであげれば解決できます。

trait Trait<T> {}

struct Struct<T> {
    a: Vec<Box<Trait<T>>>,
}

fn main() {}

正確にいうと&&mutRcなどでも大丈夫ですが、ポインタ型でトレイトを参照してあげることでサイズ不定のエラーを防ぐことができます。

比較

見た目の話ではジェネリクスの方が少し煩雑ですが、静的に解決されるので高速に動作します。
一方トレイトオブジェクトはポインタを挟むので少し遅くなります(もう少しいうとvtableというのを使うので単なるポインタの参照より遅いです)

速度以外の点でいうと、トレイトオブジェクトは複数種類の実装を交ぜることができます。

trait Trait<T> {}

struct Struct<T> {
    a: Vec<Box<Trait<T>>>,
}

impl<T> Trait<T> for () {}
impl<T> Trait<T> for bool {}


fn main() {
    let mut s: Struct<()> = Struct { a: vec![] };
    s.a.push(Box::new(()));
    s.a.push(Box::new(true));
}

私は多くの場合ジェネリクスを使いますが、ジェネリクスを使うと型が煩雑になりすぎる場合やこのように複数の実装を交ぜたいときにはトレイトオブジェクトを使います。

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  • お〜確かに where Impl: Trait<T> でできますね。この方が自然な感じがします。PhantomData は存在も知りませんでした。ただ、自分の例くらい単純な場合でもこれが必要になるのは若干辛い... Box もアリですねぇ
    – perrier
    2017年4月28日 14:31
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おっしゃる通り、Traitのサイズ(厳密には、Traitを実装したあらゆる具象型のサイズ)はコンパイル時に一意に定まりません。以下のコードはコンパイルエラーになります。

use std::mem;

trait Trait<T> {}

fn main() {
    println!("{}", mem::size_of::<Trait<i32>>());
    //  → エラー:the trait `std::marker::Sized` is not
    //        implemented for `Trait<i32>`
}

一方で、Traitを指すポインタのサイズならコンパイル時に定まります。Boxという所有権を持つポインタがありますので、Traitをそれに入れます。これをボックス化と呼びます。

fn main() {
    println!("{}", mem::size_of::<Box<Trait<i32>>>());
    //  → 16
}

この方法を使うと、質問の例は以下のようになります。

trait Trait<T> {
    fn get_item(&self) -> &T;
}

struct Struct<T> {
    a: Vec<Box<Trait<T>>>,
}

struct Green<T>(T);

impl<T> Trait<T> for Green<T> {
    fn get_item(&self) -> &T {
        &self.0
    }
}

struct Blue<T>(T);

impl<T> Trait<T> for Blue<T> {
    fn get_item(&self) -> &T {
        &self.0
    }
}

fn main() {
    let mut s = Struct { a: Vec::new() };
    s.a.push(Box::new(Green(0)));
    s.a.push(Box::new(Blue(1)));

    for elem in &s.a {
        println!("{}", elem.get_item());
    }
}    

なお、ボックス化したトレイトを「トレイトオブジェクト」と呼びます。トレイトオブジェクトに対するメソッド呼び出しでは、動的ディスパッチという手法が取られるので、もう一つの手法である静的ディスパッチに対して性能面でやや不利になります。(ちなみに、RustとC++を除くほとんどのオブジェクト指向言語では、動的ディスパッチのみをサポートしています。つまり最初からボックス化されています)

トレイトオブジェクトに関して、詳しくはこちらを参照してください。
https://rust-lang-ja.github.io/the-rust-programming-language-ja/1.6/book/trait-objects.html

1
  • なるほど、リンク先で確認したところ、トレイトオブジェクトは確かに data, vtable の2つのポインタしか含まないのでトレイトオブジェクト自体のサイズは静的に分かりますね。分かりやすい実例までありがとうございます。
    – perrier
    2017年4月28日 14:13

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