クラスの基本形
クラス定義の基本形を示します。
class クラス名 : スーパークラス名, 【準拠するプロトコル名】 { // カッコ内はオプション
var プロパティ名: 型名 【= 初期値】
func 【インスタンス】メソッド名(引数名: 型, ・・・) 【-> 返り値の型】 {}
}
クラスの基本構成物は、ほかにイニシアライザ、定数、クラスメソッド、タイププロパティ、タイプメソッドなどありますが、必要十分条件の必要条件は、プロパティと(インスタンス)メソッドです。ご提示のコード中のクラスloadCSV
とstep1
いずれにも、プロパティがなく、それでコンパイルエラーになりませんが、クラスとは何か、何を目的にしているのかという、そもそも論を考えると、何も値を保持しないクラスは、蜜や花粉を巣に持ち帰らないミツバチと同じといえます。
※ここでいうプロパティPropertyは、インスタンス変数Instance Variableと呼ぶことがあります。オブジェクト指向言語の多くで、インスタンス変数という用語が使われているので、そちらの方が通りがいいのですが、厳密には、プロパティとインスタンス変数は同じではないので、プロパティを使います。
変数のスコープ(有効範囲)
変数には有効範囲があり、有効範囲をスコープと呼びます。そして基本として、ブロック({から}で囲まれた、コードの集まり)がすなわちスコープになります。変数のスコープは、変数の寿命といってもよくて、プログラムの実行がブロックから抜けると、ブロック内の変数は解放されます。
func hoge() {
var a: Int
a = 200
do {
var a: Int
a = 100
print("Local a = \(a)")
}
print("Global a = \(a)")
}
hoge()
// "Local a = 100"
// "Global a = 200"
Playgroundで上のコードを書いて、実行してみてください。
ブロックは、関数(メソッド)、条件文、繰り返し文などで使われますが、独立したブロックを作ることもでき、その場合、Swiftでは、do
を頭につけます。
関数hoge
内で、変数a
を重複して宣言していますが、コンパイルエラーにも、実行エラーにもなりません。それは、ブロックが入れ子になっており、do {}
内の変数a
の有効範囲がブロック内に限定されるからです。
func hoge() {
do {
let b = 300
}
print("b = \(b)") // Use of unresolved identifier 'b'
}
hoge()
ブロックの外で、変数b
にアクセスしようとすると、「変数が定義されてない」とエラーになります。
ここまでで、クラスstep1
のメソッドstep1()
で、d = data
の行でエラーになる理由がお分かりになりましたでしょうか?
変数をクラス内のどこでも使えるようにするには、プロパティとして宣言することです。プロパティとして宣言するということは、同時に、変数の寿命が、インスタンスの寿命と同じになることも意味します。(インスタンス外部からアクセスできる点もあり、大事ですが、ここではその説明は割愛します)
以下、ご提示のコードに改良を加えたコードを載せます。メソッドloadCSV()
の実装を、イニシアライザに移動しています。この変更が、プログラム全体の設計の中で、妥当なものかは、私には判断できません。
それと、配列dataの要素の型を、String
からDouble
に変更しています。これもご提示のコードの範囲だけで判断すれば、要素を文字列でなく数値にすべきだからです。プログラム全体の設計から判断したものではありません。
import UIKit
// import Foundation // UIKitがFoundationをインポートしているので、不要。
class LoadCSV { // 型名(クラス名含む)は、大文字で始めるという規則があります。
let number = 32
var data: [[Double]] // プロパティとして、dataを宣言。
// イニシアライザ
init() {
data = [[Double]](repeating: [Double](repeating: 0.0, count: number), count: number)
if let csvUrl = Bundle.main.url(forResource: "data0112", withExtension: "csv") {
do {
let csvData = try String(contentsOf: csvUrl)
var dataList = csvData.components(separatedBy: ",")
let listCount = dataList.count
// dataListの要素数が、number * numberを超えた場合、number * numberを残して、はみ出した分は切り捨てる。「エラーと出力して終わり」ではさすがにまずいでしょう。
if listCount > number * number {
dataList = [String](dataList[0..<number * number])
}
for (n, item) in dataList.enumerated() {
if let theNumber = Double(item) {
data[n / number][n % number] = theNumber
} else {
data[n / number][n % number] = 0.0
}
}
} catch {
fatalError("Not found CSV files")
}
}
}
}
class Step1 : LoadCSV{ // 型名(クラス名)を大文字で始める。
func step1(){
let a: Double = 900.0
for row in 0..<data.count { // 後述
for i in 0..<data[row].count {
if data[row][i] == 0.0 {
data[row][i] = a
}
}
}
// mapメソッドを使った場合。
// data = data.map{ row in
// row.map{ item in
// if item == 0.0 {
// return a
// } else {
// return item
// }
// }
// }
}
}
let obj = Step1()
obj.step1()
print(obj.data)
Range
(範囲)の書き方の誤解があるので、質問と直接関係ありませんが、説明しておきます。
Range
には、CountableRangeとCountableClosedRangeがあります。
0..<32
は、0 ≦ x < 32
で、0...32
は、0 ≦ x ≦ 32
です。使用を間違うと、out of rangeのエラーになります。