質問の "コルーチン" がコルーチンが一般に表す概念である
- ユーザ (プログラマ) が
yield
を明示的に呼ぶことである時点で処理を中断して他の処理にコントロールを移行する仕組み
- 逆にユーザが明示しない限りは処理が切り替わることはない, non-preemptiveな並行処理の仕組み
のことを指すのであれば、goroutine はユーザが処理の切り替わりのタイミングや次に実行されるべき処理を明示的に指定することはできないので"コルーチン"ではないですし、コルーチンを実現するには現在の処理の実行状態(スタックとかコードの実行位置など)をどこかに保存する仕組みが必要なのでそのような仕組みが処理系に用意されていなければユーザがライブラリをいくら工夫しても実装できないので、Go では"コルーチン"は実現できないというのが答えかと思います。
もし質問のコルーチンの意図が、「関数の実行を途中で中断することでイテレータを簡単に実装する方法」(例えば Python の yield
) でイテレータを中断してもメモリリークが起こらない方法を意図するのであれば、ご指摘のようにgoroutineはGCの対象にならないので、イテレーターが内部で使っているgoroutineに停止用の信号を送ってやりgoroutineを明示的に停止するしかないと思います。
以下の例では終了通知用のチャネル quit
を作り、goroutine内で select
を使って ch
が読み込まれた場合と quit
の通知が来た場合の分岐を行っています。http://play.golang.org/p/_M6BjW2tNZ
package main
import "fmt"
import "time"
func routine() {
quit := make(chan bool)
defer close(quit)
ch := make(chan int)
go func() {
defer fmt.Println("end of iterator")
i := 0
for {
select {
case <-quit:
return
case ch <- i:
i++
}
}
}()
fmt.Println(<-ch)
fmt.Println(<-ch)
fmt.Println(<-ch)
}
func main() {
routine()
time.Sleep(time.Second)
}
ただこの書き方でも close(quit)
を忘れると簡単にgoroutineがリークしてしまいますし、
Go ではチャネルとgoroutineを使ったこのようなイテレータの実装は推奨されていないように思います。
またチャネルは遅いので、Goでプログラムを書く大きなメリットの1つである実行速度が損なわれる可能性があります。
質問の例のようなイテレータの内部状態が比較的シンプル (質問の例では int
1つ) な場合なら内部状態のポインタをnext関数のレシーバか引数で受け取って内部状態を書き換えつつ、ループの終了状態に達したら false
を返すのが Go での正しい書き方かなと思います。http://play.golang.org/p/8X0GjCOrMA
package main
import "fmt"
type IntRange struct {
cur int
end int
}
func NewIntRange(n int) *IntRange {
return &IntRange{
cur: -1,
end: n,
}
}
func (r *IntRange) Next() bool {
r.cur++
return r.cur < r.end
}
func main() {
sum := 0
r := NewIntRange(100)
for r.Next() {
if r.cur > 10 {
break
}
fmt.Println("val ==", r.cur)
sum += r.cur
}
fmt.Println("sum =", sum)
}
あるいはループの中身をコールバックを使って渡すかですね。この方法だとループの定義側は上のコードよりシンプルになりますが、逆に利用側のコードが複雑になります。http://play.golang.org/p/7N8Wp3Q4Kj
package main
import "fmt"
func intRangeLoop(n int, body func(i int) bool) {
for i := 0; i < n; i++ {
if !body(i) {
break
}
}
}
func main() {
sum := 0
intRangeLoop(100, func(i int) bool {
if i > 10 {
return false
}
fmt.Println("val ==", i)
sum += i
return true
})
fmt.Println("sum =", sum)
}
また簡単なプログラムで実行速度を比べてみるとチャネルを使った実装は100倍以上遅いことが分かります。http://play.golang.org/p/keunicUsHr (Go Playground では実行時間が測定できないので手元で build して実行して下さい)。そのため、やはりチャネルを使ってイテレータを実装するのは現在のGoでは推奨されないかと思います。
Channel Version: 4.372033357s
Next version: 34.967099ms
Closure version: 43.641982ms