Array
と言うのはSwiftの標準ライブラリのデータ型(の中でも最もよく使われるもの)と全く同じ名前ですので、自分のアプリの中で別の意味で使うのは避けた方が良いと思います。
またSwiftがらみのAppleのコーディングルールでは、「型名のみに大文字のキャメルケースを用いて、それ以外の場合は小文字で始める」と言うのがあり、Appleのサンプルコード群の中でも、本家StackOverflowに名回答を連発している古参Swiftプログラマーの間でも大変よく守られています。その辺のルールはきちんと守った方がコードの読みやすさを格段に増しますので、今後は少し気にしてコーディングされた方が良いでしょう。
以下の説明では勝手にarray
と変更させていただきます。
さて、本題の方ですが、Swift 3になって、様々な自動の型変換が廃止された上に、NSArray
やNSDictionary
が[Any]
や[AnyHashable: Any]
と言うデータ型としてSwift側にimportされるようになりました。このAny
と言うのは大変扱いにくいもので、「Swift 3になってバグが出た」と称する報告のかなりの部分がこのAny
に起因しています。
今後作られるSwift 3のアプリでは、NSArray
, NSMutableArray
, NSDictionary
, NSMutableDictionary
などのObjective-C由来のデータ型は特別な理由がない限り使用せず、Array
, Dictionary
と言ったSwift由来のデータ型を使用するようにした方がコードがシンプルでわかりやすくなります。
(残念ながら「Swift2用に」書かれたサイトでも特別な理由がないままNSArray
やNSDictionary
を多用するコードを掲載していることがあります。そのような場合には自分で頑張って変換してください。)
あなたのAppDelegate
はこんな感じになるでしょう。
var array: [Int] = [] //整数しか格納しないようなので、`[Int]` (`Array<Int>`と同じ意味)と宣言しておく
func application(_ application: UIApplication, didFinishLaunchingWithOptions launchOptions: [UIApplicationLaunchOptionsKey: Any]?) -> Bool {
array = [0,0,0,0,0,0] //使い方は`NSMutableArray`と大きく変わらないが、時々細かい修正が必要になる
return true
}
ViewControllerの方はこんな感じになります。
let appDelegate = UIApplication.shared.delegate as! AppDelegate //AppDelegateのインスタンスを取得
if appDelegate.array[2] == 1 {
aP += 0.5
bP += 0.5
} else if appDelegate.array[2] == 2 {
cP += 0.5
dP += 0.5
}
Array
型をOptionalにする必要性は薄いと思われるので、AppDelegate
の方で非Optionalに変更しておきましたから、危険な「私のアプリをクラッシュさせてね演算子」!
を使う必要もありませんし、要素のデータ型はInt
と宣言してありますから、一切のキャストは必要なくなります。
実際のアプリでは整数以外のデータもその配列に保存したい、と言う場合があるのかもしれませんが、その場合にはそれ専用の別の配列を用意するか、整数と整数以外のデータをまとめて持てるような自分専用のデータ型を定義した方がわかりやすいコードになるでしょう。(良い参考記事等が見つからなければまた別件としてご質問ください。)
ここからはエラーコードの詳細ですが、特にSwift 3の内部でどんなことが起こっているのか詳しく知りたいという人以外は読まなくても大丈夫です。
整数リテラル(0
)を含む配列リテラル([0,0,0,0,0,0]
)をNSMutableArray
型の変数に代入しようとすると、Swiftは各整数リテラルの値をNSNumber
型のデータに変換しようとします。NSNumber
型というのは「クラスクラスター」と呼ばれるもので、実際のNSNumber
型のインスタンスは内緒のサブクラスのどれかなのですが、ご質問者の例の場合、それがエラーメッセージにある_SwiftTypePreservingNSNumber
です。何も情報が公開されていないので、「NSNumber
の一種だ」とだけ思っていれば大丈夫です。
一方元コードのViewController
では、それをNSObject
経由でDecimal
型に変換しようとしています。上記の_SwiftTypePreservingNSNumber
はNSNumber
のサブクラスであり、当然それはNSObject
のサブクラスでもありますから、その部分はパスするのですが、参照型であるNSObject
を値型であるDecimal
に変換するには、その実際の中身は、参照型でありNSObject
のサブクラスでもあるNSDecimalNumber
でないといけません。(NSObject
をString
に変換する場合、実際の中身はNSString
でないといけないと言うのと同じ理屈です。)
これで元のエラーメッセージを読み解く準備は終わりです。「(NSMutableArray
に入っていた)_SwiftTypePreservingNSNumber
と言うデータ型(0
が変換されてその中に入ってます)は(Decimal
型にキャストするのに必要な)NSDecimalNumber
には変換できませんよ」と言っているわけです。
Swift 2までは、Swiftのデータ型とObjective-Cの対応するデータ型との変換は大抵自動的に行われていたので、ほとんど気にする必要がない場合が多かったのですが、それらの自動変換のほとんどはSwift 3で削除されてしまったので、意識していかないと実行時にしかエラーを見つけられない厄介なバグを混入してしまうこともあります。しっかり覚えていってください。
Array
と言うのはあなたがご自分でAppDelegate
(appDelegate
はAppDelegate
型だと思うのですが、それも明記されていませんね)のインスタンスプロパティとして宣言されたものでしょうか? Xcode 8のmigratorは時々変な変換をするので、変換前のコードを示してもらった方がわかりやすいかもしれません。appDelegate
, (そのメンバーであるはずの)Array
,aP
,bP
,cP
,dP
などなど、あなたのコードの中に現れていながら何の説明もない要素がたくさんあります。それらを含んで(最低でもデータ型と初期値がわかるような)コードを提示しないと、的確な回答を得るのは難しいと思います。