プログラムの実行時間を、並列化可能な部分の実行時間+逐次処理部分の実行時間と考えた時に、第一項は並列化により短縮することができ、理論的には並列数を無限大とすることで0に近似できます。
並列化なしの時の処理時間を 100 とし、逐次処理部分がそのうち 5% だとすると、
並列化なし 95 + 5 = 100
5並列 95/10 + 5 = 19 + 5 = 24 (4.2倍高速化)
20並列 95/10 + 5 = 9.5 + 5 = 14.5 (6.9倍高速化)
1000並列 95/1000 + 5 = 0.1 + 5 = 5.1 (19.6倍高速化)
100000並列 95/100000 + 5 ≒ 5 (20倍高速化)
となり、逐次実行部が5%あると20倍までしか高速化できない、というのはこういうことです。
逐次実行部が1%分であれば理想的には100倍高速化できますし、0.1%であれば1000倍高速化できます。
逐次実行部の割合を下げるには、逐次実行部を少なくするのではなく、並列実行部を大きくしてもよいのです。
たとえば
1 + 1/x + 1/x^2 + ... 1/x^n
の値を様々なxとnで求める問題があるとします。
従来 x と n を それぞれ 1, 2, 3, ... 1000 で求めていたところ、x = 1, 1.01, 1.02, ... 1000 n = 1, 2, 3, ... 100000 とすれば並列実行部を約 10000 倍にすることができ、これは逐次実行部を1/10000にするのと同じことです。
実際の数値計算やシミュレーションでもイメージとしては「より計算の繰り返しを増やす」とか「より多くの数値で計算してみる」とかで精度があがるので、並列数を増やす方向の高速化でもニーズがあると言うことになります。