はい、同じ目的を達成する正規表現でも、書き方によって処理速度は異なります。
このことについて詳細に解説するには、コンピューターがどのように正規表現の処理をしているのかについて知っていただく必要があります。ですが正規表現の処理の仕方はオートマトン型や VM 型などいくつかあり、その実装もいくぶんか複雑ですので、短い回答で説明するのが難しいです。
そこでこの回答では、ふんわりとしたイメージのもとで解説することを目指し、詳細は書籍などにゆだねることとします。
たとえばバックトラックで処理速度が変わる
例として、数字の列に対してマッチする正規表現について考えてみます。
[0-9]*
という正規表現は数字の列にマッチします。たとえば 12345
という文字列にマッチします。このとき、あくまでイメージですが、おおよそ次のような流れでマッチしていきます:先頭の 1 文字を見ると 1
であり、 [0-9]
にマッチします。次の 1 文字も [0-9]
です。このまま繰り返すと最後の文字まで [0-9]
です。したがって 12345
は [0-9]*
にマッチします。
さて、別の正規表現として (0*|1*|2*|3*|4*|5*|6*|7*|8*|9*)*
というのも数字の列にマッチします(本当にそうなるか考えてみてください)。たとえば先ほどと同じように 12345
という文字列にどんな風にマッチするかというと、次のような感じです:先頭の 1 文字を見ると 1
です。これは 0
ではなく、したがって 0*
にマッチしません。1
ではあるので 1*
にマッチするかもしれません。次の 1 文字を見ると 2
なので 1
ではありません。よって先頭の 1 文字に戻ります。先頭から 1 文字目までが 1*
にマッチすると分かりました。次の 1 文字を見ると 2
なので 2*
にマッチしそうです。次の 1 文字を見ると 3
なので元の文字に戻ります。1 文字目から 2 文字目までが 2*
にマッチすると分かりました。次の文字に進みます。3
なので 3*
にマッチしそうです……(省略)……さて、5 文字目から末尾までが 5*
にマッチすると分かりました。これで最後の文字です。したがって全体である 12345
が (0*|1*|2*|3*|4*|5*|6*|7*|8*|9*)*
にマッチすると分かりました。
随分と長くなってしまいました。別の正規表現の方では、何回か「マッチしないので戻る」という処理が発生しています。これをバックトラックといいます。同じ文字列たちにマッチする正規表現でも、バックトラックの回数が異なるものが存在します。そして場合によってはこのバックトラックの回数が処理速度に影響を与えます。(ただし、あくまで処理系が内部でどのように正規表現を処理しているのかに依存する、という注意書きはしておきます。)
このように、同じ文字列に対してマッチする正規表現でも書き方によって処理速度が異なる可能性があります。場合によっては大きく処理速度が変わります。処理が遅くなる要因はいくつかありますが、とりあえずはバックトラックに気を遣うと大抵は足りるはず……です。
\K
も使い方によっては処理速度に影響する
質問文に例として挙げられたものは、より高度な話が必要です。\K
というのは Perl の正規表現で導入された記法で、Perl のドキュメントには以下のように書かれています:
いくつかの理由から、\K
は等価な (?<=...)
構成子より非常に効率的で、文字列の中で何かに続いている何かを効率的に 取り除きたいようなシチュエーションで効果的に役立ちます。
しかし今回おこないたい処理はドキュメントで触れられているようなシチュエーションではありませんし、そもそも正規表現処理系が Perl ではないため処理の方法が異なり効率が変わっている可能性があります。
自分は EmEditor における正規表現実装について知識が足りず、今回の例がどのくらい速度に差が出るのか明確な答えを出せません。手元に処理系があるのでしたらダミーのテキストを用意して処理速度のテストをすることはできると思いますので、そういった実験をしてみることである程度把握することは可能です。
リンク
より詳しく知りたい場合のリンクをいくつか置いておきます。