この OptionalType
や OptionalProtocol
はどういったテクニックなのでしょうか?
Swiftのジェネリックに対する制限を回避するために Optional
型だけが適合するプロトコルとして宣言されています。
(Optional
以外でOptionalType
や OptionalProtocol
に適合する型を定義することもできますが、例として挙げられた両者ともそんなことは少しも考慮していません。)
別質問の方で話題にされたようなメソッド、要素型がOptional
の時にだけ働くような拡張メソッドを定義したい場合、現在のSwiftでは、それを自然に表現することが出来ません。
extension Array where Element == Optional {
//...
}
Optional
のようなジェネリック型を使用する場合、型パラメータを明示しないとエラーになります。
extension Array where Element == Optional<T> {
//...
}
しかし、上のように書くと、未定義型T
を使用していると言って怒られます。
extension<T> Array where Element == Optional<T> {
//...
}
しかし、Swiftでは、extensionに新たなジェネリックパラメータを導入することは出来ず、上のような書き方はまともに構文解析さえしてくれず、意味不明のエラーになります。
そこでElement
がOptional
型であると言う制約を表現するために、OptionalType
なんてプロトコルを導入し、Optional
型だけをそのプロトコルに適合させておきます。
つまり、
「ある型がOptionalType
に適合している」⇔「その型はOptional
型である」
と言う状態にしてしまうわけです。
その状態では、
extension Array where Element: OptionalType {
//...
}
なんて宣言してやれば、Element
がOptional
型の時にだけ有効なextensionが宣言できると言うわけです。
特に昔のSwiftでは、ジェネリック型に==
での制約をつけることができなかったこともあり、よく使われたテクニックです。
現在では==
を使った制約も使えますし、メソッド単位であればextension中で新たなジェネリックパラメータを導入することも出来るので、masakih さんの回答にあるようなコードの書き方の方が自然でしょう。
extension Sequence {
func removeNils<T>() -> [T]
where Element == Optional<T>
{
return self.compactMap { $0 }
}
func mapNotNil<R, T>(_ transform: (T) throws -> R) rethrows -> [R]
where Element == Optional<T>
{
return try self.compactMap{try $0.map{try transform($0)}}
}
}
すべてのメソッドにwhere Element == Optional<T>
なんて制約を書くより、Optional
型であることを示すためだけのプロトコルを定義する方がまし…なんて思う人もいるかもしれませんが。
associatedtype Wrapped
と
Swift自体の
public enum Optional<Wrapped> : ExpressibleByNilLiteral
の<Wrapped>
の関係性について
OptionalType.Wrapped
は、プロトコルOptionalType
の関連型(associatedtype)、Optional.Wrapped
はジェネリック型Optional
の型パラメータであるわけですが、Optional
型をプロトコルOptionalType
に適合させることにより、両者は同じ型であるものと扱われるようになります。
protocol MyProtocol {
associatedtype MyAssocType
var assocValue: MyAssocType? {get}
}
extension MyProtocol {
func showMyAssocType() {
print(MyAssocType.self)
}
}
class MyClass<T> {
var assocValue: T? = nil
func showT() {
print(T.self)
}
}
extension MyClass: MyProtocol {}
let myObj = MyClass<Int>()
myObj.showT() //->Int
myObj.showMyAssocType() //->Int
追記 コメントでいただいた内容について。
少し説明を端折りすぎてしまったようですね。
associatedtype
の名前はなんでもよいと思う
その通りです。「associatedtype
の名前」に大きな意味はありません。
protocol OptionalType {
associatedtype Hoge
}
extension Optional: OptionalType {
}
で、 Type 'Optional<Wrapped>' does not conform to protocol 'OptionalType'
というエラーになります。
これまたその通りですね。ただし、このエラーは「associatedtype
の名前」が異なっているから発生しているのではなく、「Hoge
がどのような型になるか決定できない」ために、起こっているものです。
例えば、次のように書いてやると、エラーは出なくなります。
protocol OptionalType {
associatedtype Hoge
var optional: Hoge? { get }
}
extension Optional: OptionalType {
var optional: Wrapped? {
return self
}
}
この場合、SwiftはプロトコルOptionalType
の実装にはvar optional: Hoge?
というプロパティ(最低getterだけでOK)が必要だということを知っている状態で、Optional
型を見るわけですが、すぐにvar optional: Wrapped? {...}
と言うプロパティが宣言されているのが見つかります。
var optional: Hoge?
↑↓
var optional: Wrapped?
この結果、Swiftの型推論が働いて、OptionalType.Hoge
はOptional.Wrapped
と同じ型である、と言うことになるわけです。
このように、「Swiftが型推論できるような実装を含めてやることで、異なる型名でも両者が同じものを表すとSwiftにわからせることが出来ます。」
説明がほとんど無かった点については大変失礼しましたが、先の例でもMyProtocol.MyAssocType
とMyClass.T
の「名前」は全く違っているのに、なぜ同じ型であるものと扱われるのか、はお分りいただけましたでしょうか。
まだまだ言葉足らずかもしれませんが、わかりにくいところがあれば、またコメントしていただけると助かります。