7.10現在、GHCでは重複したフィールド名をうまく扱うことができません。しかし、GHC 7.12からは、OverloadedRecordFields(https://ghc.haskell.org/trac/ghc/wiki/Records/OverloadedRecordFields/Design)と呼ばれる拡張が導入される予定で、それを使えば同名のフィールドを定義できます。
OverloadedRecordFieldsを利用すると、urlに以下のような型を持たせることができます。
url :: r { url :: String } => r -> Integer
r { url :: String }
は、レコードr
がurl :: String
というフィールドを持っているという制約を示しており、フィールド名によるオーバーロードが可能になります。
また、現在のHaskell(GHC)でオーバーロードされたフィールドを実現する研究は多数存在し(https://wiki.haskell.org/Extensible_record)、盛んにライブラリも作られています。
最近リリースされたrecordというライブラリは、Template Haskellを用いて、OverloadedRecordFieldsを使わずにそれに近い記述を可能にしています。作者のページ(http://nikita-volkov.github.io/record/)で解説されていますが、インターフェイスは比較的シンプルで、パフォーマンス上のデメリットも少ないため、お勧めできます。recordを使うと、JavaとLinkの例はこのようになります。
{-# LANGUAGE QuasiQuoters #-}
import Record
import Record.Lens
type Java = [r| { power :: Integer, url :: String } |]
type Link = [r| { title :: String, url :: String } |]
example :: Link
example = [r|{ title = "example", url = "http://www.example.org" }|]
-- view [l|url] :: Java -> String
-- view [l|url] :: Link -> String
宣伝になってしまいますが、私もこの問題に取り組んでいて、extensibleというライブラリを開発しています。こちらは、まずフィールド名と型をあらかじめ決めるというアプローチをとっているので、ほかの言語における構造体とは毛色が異なります。
{-# LANGUAGE TemplateHaskell, DataKinds, TypeOperators, TypeFamilies, FlexibleContexts #-}
import Data.Extensible.Record
import Data.Extensible.Record.Internal.Rig
mkField "power" [t|Integer|]
mkField "url" [t|String|]
mkField "title" [t|String|]
type Java = Record '["power", "url"]
type Link = Record '["title", "url"]
example :: Link
example = title @= "example"
<: url @= "www.example.org"
<: Nil
-- view url :: "url" ∈ xs => Record xs -> String
OverloadedRecordFieldsはフィールドが第一級でない、recordはTemplate Haskellが必要、extensibleを含む拡張可能レコードはパフォーマンスがあまり良くないというデメリットがあり、Haskellerの間でも共通の答えは出ていないのが現状です。