最終的な実現方法はある程度まとまっているのですが、そこに辿り着くためにはかなりややこしい話が絡んできます。
C++言語はC言語と互換性があり、extern "C"
とはC言語から呼び出し・静的リンクするための記述です。外部からのDLL呼び出し、つまり動的リンクには異なる記述が必要になります。
その際、動的リンクに使用する関数名と静的リンクの関数名の両方を考慮する必要があり、更に静的リンクの関数名は単純にC++言語での関数名というわけではなく呼び出し規約が影響してきます。
呼び出し規約は引数や戻り値の受け渡し方法を決定するものですので、呼び出し側と一致させないと関数呼び出しに失敗します。呼び出し規約にはcdecl
、fastcall
、stdcall
などがあり例えばstdcall
の場合、C++言語で
int __stdcall Return() {
...;
}
と記述した場合、C#言語では
[DllImport("Test", CallingConvention = CallingConvention.StdCall)]
private static extern int Return();
といった具合に対応させる必要があります。
x86で動的リンクする場合は上記stdcall
が推奨されています。x64では呼び出し規約が統一されていてどれを選択しても影響はないのですが、x86も考慮して記述しておくことをお勧めします。
呼び出し規約と静的リンクの関数名が定まったところで本題の動的リンクですが、記述方法が3種類あります。
DEFファイル
1つ目の方法はDEFファイルを作成することです。拡張子を.DEF
とし内容は次のように外部から呼び出し可能とする関数名を列挙します。
EXPORTS
Return
この方法は簡単ではありますが、C++ソースコードからどの関数がエクスポートされているか判別がつかないため規模が大きくなるとミスを誘発します。
__declspec(dllexport)
__declspec(dllexport)
というキーワードが用意されています。
__declspec(dllexport) int __stdcall Return() {
...;
}
非常に簡単に記述できますが、1つ欠点がありエクスポートされる関数名は静的リンクの関数名がそのまま使われるためマングル化名となり(上記例では?Return@@YAHXZ
)、C#からは呼び出しが煩雑になります。
[DllImport("Test", EntryPoint = "?Return@@YAHXZ", CallingConvention = CallingConvention.StdCall)]
private static extern int Return();
#pragma comment(linker)
最後の方法ですが
int __stdcall Return() {
#pragma comment(linker, "/EXPORT:Return=?Return@@YAHXZ")
...;
}
とすることで静的リンクの関数名?Return@@YAHXZ
が動的リンクする際Return
で呼び出し可能になります。
[DllImport("Test", CallingConvention = CallingConvention.StdCall)]
private static extern int Return();
しかしまだ記述方法が煩雑です。これを改善するには定義済みマクロを使用します。
int __stdcall Return() {
#pragma comment(linker, "/EXPORT:" __FUNCTION__ "=" __FUNCDNAME__)
...;
}
だいぶ楽になりましたが長いですし、実はコンパイルはできてもVisual Studio IntelliSenseが誤ってエラーを報告します。これらすべてを解決するためには
#ifdef __EDG__
#define DLLEXPORT
#else
#define DLLEXPORT __pragma(comment(linker, "/EXPORT:" __FUNCTION__ "=" __FUNCDNAME__))
#endif
int __stdcall Return() {
DLLEXPORT;
...;
}
と記述することで、一通りの問題を解決しつつ、簡単な記述が実現できます。これらについてはブログで紹介しています。