UPDATE(正しいとは言えない記述を…なんて始めておきながら不完全で「正しいとは言えない記述」になってしまっていたので修正しました。少し長くなってしまいましたが、一般のstructとBool
では動作が異なるあたりをご参照ください。)
本題の「言語仕様として決まっているのか」からは離れたままになってしまいますが、説明を加えておきます。
description
プロパティが定義されていない型でも文字列補間は働きます。
struct Test {
var a: Int
}
let val = Test(a: 1234)
let str = "\(val)" // => "Test(a: 1234)"
description
プロパティが定義されていても、それだけでは文字列補間には使われません。
struct Test2 {
var a: Int
var description: String { //<- description を実装しただけでは
return "[Test2 a="+String(a)+"]"
}
}
let val2 = Test2(a: 1234)
let str2 = "\(val2)" // => "Test2(a: 1234)" <- 文字列補完構文で description は使われない
明示的にCustomStringConvertible
を実装した型ではdescription
が使われます。
struct Test3: CustomStringConvertible { //<- CustomStringConvertible を明示的に実装した場合には
var a: Int
var description: String {
return "[Test2 a="+String(a)+"]"
}
}
let val3 = Test3(a: 1234)
let str3 = "\(val3)" // => "[Test2 a=1234]" <- description が使われる
CustomDebugStringConvertible
を実装している場合には、description
が実装されていても、(CustomStringConvertible
への適合が宣言されていないなら)debugDescription
が優先される。
struct Test4: CustomDebugStringConvertible { //<- CustomDebugStringConvertible を明示的に実装した場合には
var a: Int
var description: String {
return "[Test2 a="+String(a)+"]"
}
var debugDescription: String {
return "Type=Test2, properties: a="+String(a)
}
}
let val4 = Test4(a: 1234)
let str4 = "\(val4)" // => "Type=Test2, properties: a=1234" <- debugDescriptionが使われる
なお、文字列補間の細かい動作はSwiftのバージョンによって変遷してきています。過去にはdescription
プロパティを定義するだけで、文字列補間にその値が使われる、と言う動作をしていたバージョンもあるかもしれませんが、少なくともSwift3ではそのようにはなっていません。
実は上記の動作はString.init(describing:)
と全く同じということになります。
init(describing:)
If instance
conforms to the TextOutputStreamable
protocol, the result is obtained by calling instance.write(to: s)
on an empty
string s
.
instance
がTextOutputStreamable
に適合していれば、instance.write(to: s)
の結果を返す。
If instance
conforms to the CustomStringConvertible
protocol, the result is instance.description
.
instance
がCustomStringConvertible
に適合していれば、instance.description
を使う。
If instance
conforms to the CustomDebugStringConvertible
protocol, the result is instance.debugDescription
.
もしinstance
がCustomDebugStringConvertible
に適合していれば、instance.debugDescription
を使う。
An unspecified result is supplied automatically by the Swift standard library.
Swiftの標準ライブラリが、仕様化されていない結果を自動的に返す。
(非常に似たものとして、String.init(reflecting:)
と言うのがあります。文字列補間がどちらに当たるのか、ぜひご自身でPlaygroundなどの上で確かめてください。)
上記の説明がBool
にもあてはまるならTextOutputStreamable
に適合させれば文字列補間の結果も変わるはずだ…ということでやってみましょう。
extension Bool: TextOutputStreamable {
public func write<Target : TextOutputStream>(to target: inout Target) {
target.write(self ? "TRUE": "FALSE")
}
}
let valueTrue: Bool = true
"\(valueTrue)" // -> "true"
String(describing: valueTrue) // -> "TRUE"
print(valueTrue) // -> "TRUE"
どうやら一般のstructとBool
では動作が異なるようです。
1024jpさんのヒントを頼りにSwift Standard Libraryのソースコードから探ってみました。
StringInterpolation.swift.gyb
OutputStream.swift
StringInterpolation.swift.gyb からわかるのは、文字列補間では、以下の型に対して特別な処理が行われると言うことです。
String
,Character
,UnicodeScalar
=> _toStringReadOnlyStreamable(_:)
が呼ばれる。
内部(OutputStream.swiftに定義)ではさらにTextOutputStreamable
のwrite(to:)
が呼ばれる。
'Bool
,Float32
,Float64
,全ての整数型 => _toStringReadOnlyPrintable(_:)
が呼ばれ、その中でCustomStringConvertible
のdescription
が呼ばれる。
さて、お尋ねのBool
型の場合、上記のように、nagonsoftwareさんの言われるdescription
プロパティの値が使われる、と言う話にたどり着くわけですが…。
そもそもSwiftにはきちんとした言語仕様というものがないので、その動作が言語仕様に適合しているかどうかを議論すること自体が無意味です。
と言ってしまっては身も蓋もないので、さらに若干補足しておきますと、きちんとした言語仕様がないSwiftの世界では以下のApple製の公式ドキュメント2点が言語仕様に準ずるものとして扱われています。
The Swift Programming Language (Swift 3.0.1)
Using Swift with Cocoa and Objective-C (Swift 3.0.1)
さらにAppleのAPI reference中のSwift Standard Libraryの記述も仕様と言ってしまっていいでしょう。
ドキュメントが豊富ではない時代には(あるいは今でも)Generated Header中のヘッダドキュメントなんかも「仕様」として見られていました。
私が探した限りでは、上記のいずれのドキュメントにもBool
のdescription
が"true"か"false"のどちらかになるという記述は見つけれませんでした。(1024jpさんがOverviewの中に見つけられたような情報が他にも何かあるかもしれませんが。)
私なりの結論としては、この動作が将来変わる可能性は極めて低いと思うが、とても言語仕様とは呼べない と言ったところです。
ちなみに「Bool
の場合には文字列補間の際にString(describing:)
ではなくdescription
が使われる」と言う記述自体もどこにも見当たりませんので、その部分も「言語仕様」とは思わない方が良いでしょう。