根本的な原因は、イテレータを取るコンストラクタが、イテレータ以外のものまで受け付けてしまうことです。
エラーメッセージを見てみると、main()
の中のmyvector<int> v(10, 1);
がエラーのもともとの始まりです。
int main() {
myvector<int> v(10, 1);
コンパイラは、このv
を定義した行を、イテレータを二つ与えたコンストラクタとして解釈していますが、どうみても、10と1はイテレータではないので、これはmyvector(size_type size, const_reference value, const allocator_type& alloc = allocator_type());
を使おうとしたもの、つまりベクターのサイズと初期値を指定したコンストラクタを使うつもりだったと思います。
(以下、簡単のため、デフォルトの値を持つ引数は無視します)
下のコードは、意図したはずのコンストラクタと、実際に呼ばれたコンストラクタを抜粋したものです。
using size_type = std::size_t;
myvector(size_type size, const_reference value);
template < typename InputIterator>
myvector(InputIterator first, InputIterator last);
呼び出し側のコードを見てみると、実引数はどちらもsigned int
です。
int main() {
myvector<int> v(10, 1);
しかし、意図したコンストラクタの最初の引数はsize_type
、つまりunsigned
なので、厳密には型が一致しません。一方、イテレータを指定するコンストラクタの方は、テンプレート引数が<typename InputIterator>
で、名前こそInputIterator
ですが、実際には任意のデータ型と一致します。
つまり、コンパイラは、テンプレートではないコンストラクタで完全一致するものが見つけられなかったため、テンプレートのコンストラクタから完全一致するものを選択したわけです。実際、
int main() {
myvector<int> v(10u, 1);
と、最初の引数をunsigned
にすれば、目的のコンストラクタが使われ、エラーは出ません。
このままだと不便ですし、予想外のエラーが起きる可能性があるので、イテレータを取るコンストラクタは、実引数が実際にイテレータでない場合は、実体化されないようにしたいところですが、なかなかに面倒でしょう。標準のライブラリと一緒に使えるようにするには、std::enable_if
やstd::iterator_traits
などを駆使する必要がありそうです。