ARCによるメモリ管理が標準的となった現在では、プロパティとインスタンス変数との間に特に差異はありません。「プロパティとは、インスタンス変数へのアクセサメソッドを提供する糖衣構文でしかない」という認識は概ね正しいです。
しかし、インスタンス変数よりもプロパティを使うべきです。
宣言的である
プロパティ宣言は、それがどのような性質を持つのか記述できるという強みがあります。
@property(copy) NSNumber *value;
上記のプロパティは値がコピーして保持されることを宣言しています。
@property(strong) NSObject *deprecated DEPRECATED_ATTRIBUTE;
利用が非推奨となったことを宣言できます。プロパティを利用しているコードには警告が表示されます。
このような表現力はインスタンス変数にはありません。
実装を隠蔽できる
インスタンス変数は実装詳細です。対してプロパティはAPIです。
例えばインスタンス変数に対してnil
を代入する処理を行ったとします。
value = nil;
もしインスタンス変数value
がnil
を保持することになんらかの不都合があった場合、どう対処すべきでしょうか?ほとんどの場合、対処できません。
対して、プロパティはメソッドによるアクセスなので、
self.value = nil;
という記述は、アクセサを置き換えることで例えば次のように無害化できます。
-(void)setValue:(NSValue *)aValue
{
if(aValue){
_value = aValue;
}else{
_value = @0;
}
初期化を遅延させるなど、様々な応用が可能です。
欠点とそれを補うメリット
プロパティに全く欠点がないわけではありません。必ずアクセサを経由することから、関数呼び出しのオーバーヘッドが発生します。もっとも一般的なアプリケーションの作成では十分に無視できる程度に、コンパイラによる最適化が行われます。
そうした多少の瑕疵を大きく上回るのが、「「実装詳細にではなく、インターフェースに対してプログラミングする」というのは良い習慣が定着するメリットの方が大きいです遥かに大きいです。たとえそれが外部からアクセスされない、閉じた領域であったとしても、記法をプロパティに統一することで可読性が上がります。