書籍SQLアンチパターンの記述に沿って説明を試みてみます。
前置き
Issue
, Bug
, FeatureRequest
クラス(p.52 5.1節 図5-2)をクラステーブル継承(p.62 5.3.3節)でテーブルへマッピングすると、Issues
, Bugs
, FetureRequests
で構成された次の形になります(p.78, 6.5.6節 図6-5)。
図5-2 Issueクラスツリー
図6-5' Issueクラスマッピング(クラステーブル継承戦略)
ここで登場するBugs
に複数のコメントが付けられるようにするには、Bugs
とComments
を1対多で関連付ければ良い(p.67 6章 図6-1)のですが、更にFeatureRequests
に対してもComments
を付けたい場合にはどうしよう、というのが6章のテーマです。
図6-1' BugsとFeatureRequest双方に同じテーブルについて1対多関連を追加したい
本章の結論として、交差クラス(ERDで言うところの連関エンティティ)BugsComments
,FeaturesComments
を導入し次のような形にする、ということになります(p.75 6.5.3節 図6-4/なお下図は書籍の図を上下反転していることに注意)。
図6-4' 交差クラスを導入したIssues, Comments関連
これをクラス図で表現すると次のようになります。
図6-4' クラス図で表現
そして本書の次節の説明(p.78 6.5.6節)では、クラス図でいうと、派生クラス同士の関連を基底クラス同士の関連に置き換えることをやっています(リファクタリング手法でいうところのプルアップ)。
クラス図で表現すると次のようになる操作です。
図6-5' プルアップ後クラス図表現
回答
IssuesテーブルがBugsCommentsテーブルとFeaturesCommentsテーブルの「どちらか片方だけ」と関連したい
プルアップを行わずに、前述の 図6-4' の状態で止めておけば良い、ということになります。
そうすれば、BugComment
としか関連しないBug
とFeatureComment
としか関連しないFeatureRequest
が表現できます。これらはいずれもIssue
の具象クラスです。
この回答についての問題
Issues
はBugs
かFeatureRequests
のどちらか一方にしか関連しない前提があるのですが、この前提はRDBの制約では表現できません(p.63 5.5.3節のsql参照)。
すなわち実際には、今回の質問文にある、「アプリケーション側で管理する必要」な部分が他の箇所に転移しただけです(別の制約をアプリケーションで正しく管理しなければならない)。
本書でなぜこれが問題であると書かれていないのかというと、おそらく、(本書の記載とは反しますが)継承関係のマッピングはO/Rマッパに管理させることが念頭にありアプリケーションでは意識する必要が無い、と考えているのではないかなと想像します。
(※似たような問題はp.75 6.5.3節で言及されているにもかかわらずクラス継承関係については触れていないことから想像。このことへの言及を避けるためにERDの記述も一貫性を欠いている箇所がある。)