cygwin32 / cygwin64 の gcc で -mno-80387
つきで提示コードをコンパイルすると除算に __divxf3
なるライブラリ関数の呼び出しが生成されました。そして undefined reference to '__divxf3'
なるリンクエラーになってしまいました。ということはコンパイラは -mno-80387
に対応していても、それが必要とするランタイムライブラリ関数が用意されていないということです。
いかにも gcc 依存なランタイムライブラリ関数名っぽいので gcc-11.2.0
のソースコードを調査してみました。 __divxf3
なる関数は gcc-11.2.0/libgcc/config/ia64/lib1func.S
だけにあります。ということは今はすたれてしまった IA64 (Itanium) にしかこのランタイムライブラリ関数は実装されていないようです( IA64 は x86 / x86-64 とは違うアーキテクチャです)
# 要するに x86 や x86-64 では FPU が必ずあるので nofpu
でコンパイルする理由が一切ないってこと
ということで Debian ディストロでは実行環境が対応していない機能( -mno-80387
でコンパイルしたバイナリを実行することができないということ)は、コンパイル時点でエラーになるよう親切心で配慮がなされているということだと思われます。
ちなみに lib1func.S
中のコメントを見ると 80bit 浮動小数点数の計算という記載があって、これは確かに 8087/80387 の仕様ではあるのですが x86 あるいは x86-64 では 80bit 浮動小数点数は扱わないわけで、質問者氏のいうところの long double
が何 bit であるかは案件と実行環境の仕様とを十分に検討しないとまずそうです。
# WinXP についてきていた Space Cadet が 80bit 浮動小数点数に依存していて 64bit 浮動小数点数でコンパイルすると動きが全く違ってゲームにならない・・・なんて記事をどこかで読んだような記憶が
同様 cygwin64-clang-8.0.1-x86_64-unknown-windows-cygnus
で clang -S -mno-80387 a.c
を試したところ、普通に fdivrp
命令が生成されており -mno-80387
には効力がないことがわかりました( gcc
との互換性のためだけに -mno-80387
は受け付けるが無効ということ)。当然リンクエラーも発生しませんし実行できます。 Debian でもコンパイルエラーが出ないはある意味当然かも。
fdivrp
命令の代わりにcall __divxf3
が生成されています。でも今どき FPU を使わない理由がないので XY 問題かも? なぜ-mno-80387
を指定しなければならないのかから入ったほうがよさそう...