十進数の表現をそのまま計算したいと言うことであってますでしょうか?
Cの浮動小数点数の型であるfloat
、double
、long double
はその実装形式や基数がいくつであるかは言語仕様では決められていません。しかし、ほとんどの環境では、IEEE 754の形式を採用しており、float
はbinary32(単精度浮動小数点数)、double
とlong double
はbinary64(倍精度浮動小数点数)になっています(long double
が80ビットの拡張倍精度浮動小数点数になっている場合があります)。これらの浮動小数点数の形式は基数が2であるため、十進数の小数点数を正確に表現することはできません。つまり、0.01
は0.01に極めて近い値であっても、正確に0.01では無いと言うことです。これは2の基数の浮動小数点数を使う限り、避ける方法がありません。(IEEE 754のbinary32やbinary64を採用している理由は、多くのCPUでこれらの形式に対して四則演算等ができる浮動小数点数ユニットを持っているからです。)
では、どうするかです。先程書きましたが、Cの言語仕様としては、基数が2で無ければならないというわけはなく、基数が10の場合についても言語仕様では言及されています。つまり、浮動小数点数の基数が10になるような環境を探せばいいと言うことです。と、言いたいところですが、基数が10になるような環境は見つけられませんでした。
もう標準で対応できる方法は無いのか…、というと、未来はあります。現在策定中の次のC言語規格であるC23(現在はC2xと言われている)では、基数が10の十進浮動小数点数の型である_Decimal32
、_Decimal64
、_Decimal128
が規程される予定です。これらは既に出版済みのTS 18661-3でC言語の拡張として載っており、一部のコンパイラ(GCCやIntel Compiler等)で部分的に実装されています。通常のdobule
(binary64)では0.1
と0.2
を足しても0.3
と等しくなりませんが、_Decimal64
(decimal64)では、等しくなります。
#include <stdio.h>
int main(void)
{
double a = 0.1 + 0.2;
_Decimal64 b = 0.1dd + 0.2dd;
printf("%d\n", a == 0.3); // not equal => 0
printf("%d\n", b == 0.3dd); // equal => 1
return 0;
}
※最新のGCCやIntel Compiler等で試してください。古いバージョンやVisual C++等ではエラーになる場合があります。Clangもまだ対応はしていないようです。Visual Studioで試すとなると、カスタムビルドでGCCを使うといった方法が必要になるようです。
ただ、printf
等で十進浮動小数点数を表示する%Da
といった表現はGCCではまだ実装されていないようで、実用的にどこまで使えるかわかりません。また、CPUが十進浮動小数点数に対応した計算ユニットや命令に対応していない場合、通常の浮動小数点数に比べて非常に計算が遅くなる場合があります。なお、十進浮動小数点数にも精度があります。精度を越えて正確な計算はできませんので、その点はご理解ください。
_Decimal64
等で対応していないコンパイラの場合は、Cの標準で直接扱う方法はありませんので、外部ライブラリを使うしかありません。軽く探してみましたが、libdfpというのがあるようです。任意精度が欲しい場合はmpdecimalがいいかもしれません。
return 0;
の位置で停止してtest1
の値をローカル変数のウインドウで見ると「0.80000000000000004」と表示されます。ちなみに単にリテラルの即値で初期化(double test2 = 0.8;
)しても同じ値ですね。