C言語におけるconst
キーワードの働きについて、複数の話題が混在しているようですから、順番に解説してみます。
const
修飾には「定数値」と「読み取り専用」という2つの側面があります。両者はよく似ていますが、明確に異なる意味をもっています。前者は"値/データそれ自身"に対する修飾であり、後者が"式の評価結果"に対する修飾となることに注意してください。
- 初期値をともなう変数定義で
const
修飾を用いた場合、「定数値」の定義となります。例:const int x = 5;
とすると、名前 x
は定数値 5
となります。
- ポインタが指す先の型(詳細後述)で
const
修飾を用いた場合、「読み取り専用」宣言になります。例:int y = 10; const int *p = &y;
とすると、式 *p
の評価結果は const int
型つまり「読み取り専用」となります。
「定数値」では、実行時にその値を変更することはできません。キャストによりconst
を外してコンパイラを騙しても、続く代入操作が動作する保証はまったくありません。未定義動作つまり"何が起きても知りませんよ"状態となるため、運がよければ実行時にプログラムがクラッシュします。
const int x = 5;
x = 0; // NG: コンパイルエラー!
int *q = (int*)&x; // 強引にキャスト...
*q = -1; // NG: 未定義動作!!
「読み取り専用」は名前の通り、その式を経由した変更操作を許可しないだけです。指しているデータが通常変数であれば、キャストによりconst
を外すこともできます。
int y = 10;
const int *py = &y; // pyは変数yと同じintデータを指す
*py = 0; // NG: コンパイルエラー/'*py'は読み取り専用
*((int*)py) = -1; // OK: yの値が-1に書き変わる
y = 42; // OK: yの値が42に書き変わる
assert(*py == 42); // OK: *pyの値は42になっている
const int x = 5;
const int *px = &x; // pxは定数xを指す
*((int*)px) = -1; // NG: 定数値は書換不可(実行時クラッシュなど)
ポインタ型に対するconst
修飾では、"ポインタ値そのもの"と"ポインタが指す先のデータ"を区別して考える必要があります。下記 p0
~ p3
のポインタ型変数は、全て異なる型です。
int * p0;
const int * p1;
int * const p2;
const int * const p3;
簡単には *
の左側 const
は"ポインタが指す先のデータ"を、*
の右側 const
は"ポインタ値そのもの"を「読み取り専用」と宣言しています。例えばデータ領域 *p1
は読み取り専用ですが、ポインタ値 p1
は自由に書き替えができます。逆にポインタ値 p2
は読み取り専用ですが、データ領域 *p2
は自由に書き換え可能です。
const
修飾は、型のサイズに影響を与えません。必ず sizeof(const int) == sizeof(int)
となります。
const int* make_immutable_point(int x){
void *p = malloc(sizeof(const int));
関数 make_immutable_point()
でのメモリ確保処理は、次のように書き変えても全く同じ動きとなります。malloc()
では要求サイズのメモリ領域を確保するだけで、malloc(sizeof(const int))
と書いてもメモリ領域(≒データ)が定数値とはなりません。
void *p = malloc(sizeof(int));
質問への直接回答は次の通りです。
メイン関数内で *f=50;
のように記述するとエラーとなります。
変数 f
は const int*
型として宣言されており、*f
の評価結果が const int
型つまり「読み取り専用」となるためです。読み取り専用への代入操作はコンパイルエラーです。
これは const
として値が確保されているからなのでしょうが、
いいえ。データ(値が格納されるメモリ領域)は malloc()
で実行時に確保された領域ですから、書き換えることができます。単に受け取った変数が「読み取り専用」となっているだけです。
なぜ、このように記述すると動的に const
が確保できているのかがわかりません。
「動的に const
が確保」はされていません。データは通常の非const
領域にあり(定数ではない)、その領域を指す変数がconst
修飾されている(読み取り専用マークがある)だけです。
コメント:int t; scanf("%d",&t); const int *f = make_immutable_point(t);
のように記述すると今までの const
の扱いとは異なり後から値が自由に代入できる
t
は通常の int
型なので自由に代入可能です。make_immutable_point(t)
の呼び出しにより、t
のデータ(int型の値)がコピーされて関数に渡されるので、変数 t
のconst性と変数 f
のconst性には何の関連もありません。
const
の確保ができている理由」ですか?const
の扱いとは異なり後から値が自由に代入できることが不思議だなと思ったので質問しました。*f=50;
でエラーになるのですから、自由に代入できていないように見えました。