セキュリティと監査証跡の目的で自動的に操作ログを残すにはどうしたらよいでしょうか。
ユーザが気が付かないうちにひっそりとログを取るのが理想です。
ログに残したい情報は次の通りです。
- ユーザ名
- ユーザが入力したコマンドライン
- 端末への出力
- タイムスタンプ
プロセスアカウンティング用に広く利用できる物として "Process Accounting Utility" があります。環境によって、パッケージの名前が、 psacct
もしくは acct
になっているものです。
$ # インストール (ubuntu)
$ apt-get install acct
lastcomm
: 実行されたコマンドの表示ac
: ユーザの接続時間の表示sa
: 過去に実行されたコマンドの集計/フィルタ※ 質問の要件を満たすために、一般ユーザーからはこれらのコマンドが実行できないようにしてください。
$ # サービスの開始
$ /etc/init.d/acct start
$ # サービスの停止
$ /etc/init.d/acct stop
実際は、accton
コマンドによってプロセス監視が始められます。収集情報の格納先は、デフォルトで /var/log/account/pacct
または /var/account/pacct
になります。
lastcomm
コマンドを利用します。
$ lastcomm higon
byobu-status F higon __ 0.00 secs Wed Jan 7 03:23
sed higon __ 0.00 secs Wed Jan 7 03:23
sudo S root pts/18 0.03 secs Wed Jan 7 03:21
apt-get S root pts/18 1.85 secs Wed Jan 7 03:23
dpkg root pts/18 0.00 secs Wed Jan 7 03:23
dpkg root pts/18 0.00 secs Wed Jan 7 03:23
dpkg root pts/18 0.00 secs Wed Jan 7 03:23
apt-get F root pts/18 0.00 secs Wed Jan 7 03:23
sh root pts/18 0.00 secs Wed Jan 7 03:23
touch root pts/18 0.00 secs Wed Jan 7 03:23
...
※ 終了したコマンドのみ記録されています。実行中のコマンドは取れません。
以下のように、絞り込みやグループ化のオプションが用意されています。
特定の接続の履歴を知る:
$ lastcomm --tty pts/18
特定のコマンドの実行を知る:
$ lastcomm --strict-match --command vi
ユーザ毎日付毎の接続時間:
$ ac -d -p
ユーザ毎に履歴を表示:
$ sa --print-users
ユーザ毎にサマライズを表示:
$ sa --user-summary
出力例:
9000 3794.72re 0.09cp 0avio 2914k
23 94.46re 0.05cp 0avio 3516k ***other*
11 0.35re 0.01cp 0avio 2890k lastcomm
2 0.01re 0.01cp 0avio 18432k command-not-fou
2 3699.26re 0.00cp 0avio 54160k apache2*
2 0.00re 0.00cp 0avio 8518k lsb_release
4 0.01re 0.00cp 0avio 5465k dpkg
2 0.01re 0.00cp 0avio 4092k grep
3 0.00re 0.00cp 0avio 33328k php5
1108 0.34re 0.00cp 0avio 1111k sh
1104 0.00re 0.00cp 0avio 3950k tmux
1104 0.00re 0.00cp 0avio 4618k sed
2 0.00re 0.00cp 0avio 4282k sadc
各カラムの説明は man sa
に任せます。
logrotate
の設定環境によってはパッケージ導入時に logrotate.d 以下に設定ファイルがおかれます。 Ubuntu だと以下のようなファイルで良いでしょう。(ログは圧縮されています。 過去ログを sa -f
オプションで指定するときには、展開したデータを渡す必要があります。)
/var/log/account/pacct {
compress
delaycompress
notifempty
daily
rotate 31
rotate 31
create 0600 root root
missingok
postrotate
/etc/init.d/acct restart
endscript
}
以上です。使用にあたっては、監視の粒度に注意したいところです。acct
は、大量にコマンド実行履歴を集めますが、コマンドの引数は見ません。ディレクトリ監視、ネットワーク監視、負荷監視などとあわせることで、より細かなことがわかるようになるでしょう。
最初から細かな記録を取りたい場合は、プロセス監視デーモンとして、 auditd があります。こちらは Linux カーネルのシステムコールレベルで環境を記録するもので、事細かなシステムのログを取ります。コマンドの引数なども記録するのですが、漏れのない徹底的な監視環境を目指していない限り、 acct
の利用が適切かと思います。
参考:
Bash限定になりますが、端末への出力以外は全て実現可能です。
ref: http://tiswww.case.edu/php/chet/bash/NEWS
l. There is a new configuration option (in config-top.h) that forces bash to forward all history entries to syslog.
詳細はこちらに記載がありますので参照下さい。
http://d.hatena.ne.jp/tatac1/20120724/1343106093
ログを残す際には、ホストの時刻同期、操作される端末と別のホストにSyslogを転送する、更にLDAP等でユーザーを管理すると更にベターです。
追記: ひっそりとログを取る事を考えるのであれば、syslogデータの表示(通常はrootのみ読み取り可能)、bashのバイナリ解析、ptrace等で確認しない限り気付かれにくいと思います。
Linux OS には LD_PRELOAD という環境変数が用意されています。この変数に shared object を指定すると、コマンド(dynamic linkされたもののみ)の実行開始時に dynamic link されます。そして、その shared object 内にある function を呼び出して実行することが可能になります。
この機能を利用して、例えば libc.so 内にある system call execve(2)
を intecept する事が可能になります。
この execve(2)
は bash などのシェルプログラムなどがユーザから入力されたコマンドを実行する際に使われます。そのため、LD_PRELOAD を使って「ユーザが入力したコマンドライン」を記録することが可能になります。
以下は至極単純なサンプルコードです(配列のサイズなどはいい加減です)。ユーザ名などは stderr へ出力していますが、syslog(3)
などを使用して syslog へ出力した方が良いでしょう。
hook_execve.c
#include <dlfcn.h>
#include <stdio.h>
#include <unistd.h>
#include <string.h>
#include <sys/types.h>
#include <pwd.h>
#include <time.h>
static int (*_execve)(const char *filename, char *const argv[], char *const envp[]);
int execve(const char *filename, char *const argv[], char *const envp[]) {
// Save original execve() function
_execve = (int(*)(const char *, char *[], char *[]))dlsym(RTLD_NEXT, "execve");
// Get user name
struct passwd *pw = getpwuid(getuid());
char *username = pw ? pw->pw_name : "";
// Construct command line string
int i = 0; int len = 0; char cmdline[256];
while(argv[i]){
strncpy(cmdline + len, argv[i], strlen(argv[i]));
len += strlen(argv[i++]);
strcpy(cmdline + (len++), " ");
}
// Time stamp
char t_string[21];
time_t now = time(NULL);
strftime(t_string, 20, "%F %T", localtime(&now));
// Logging
fprintf(stderr, "%s: username = %s, command line = %s\n", t_string, username, cmdline);
// Call original execve()
return (*_execve)(filename, argv, envp);
}
コンパイルを行って shared object を作成します。
$ gcc -D_GNU_SOURCE -shared hook_execve.c -o hook_execve.so -ldl
LD_PRELOAD 環境変数に hook_execve.so を指定して bash を実行します。
$ LD_PRELOAD=./hook_execve.so bash -l
$ ldd /bin/bash
linux-gate.so.1 => (0xb7777000)
./hook_execve.so (0xb7772000)
$ ls
2015-01-07 04:37:38: username = nemo, command line = ls -FC --show-control-chars
hook_execve.c hook_execve.so*
$ wget http://www.faridani.me/data/Galton.csv
2015-01-07 04:39:02: username = nemo, command line = wget http://www.faridani.me/data/Galton.csv
--2015-01-07 04:39:02-- http://www.faridani.me/data/Galton.csv
期待通りに動作していますね。後は、例えば Ubuntu Linux であれば /etc/environment
に LD_PRELOAD の設定を追加しておくことになるでしょう。
しかし、この方法には多くの問題点があります。
execve(2)
が call される度に記録処理が実行されるのでシステムの負荷が高くなりやすいしたがって、実運用のシステムで使うのはほぼ無理、でしょうね。まぁ、参考程度に見ておいて下さい。
scriptというのもあります。
http://dev.classmethod.jp/operation/logging_operation_using_script_and_psacct/
要件を満たせるか確認してないですが、割りとサクッと使えるので検討してみるのも良いかと。